スマートフォンやパソコンから簡単に注文ができるオンラインショッピングは、日常生活に欠かせない存在になりつつあります。テクノロジーの進化に伴い、eコマース市場は目覚ましい発展を遂げてきました。現在も市場規模は拡大しており、それに伴いショッピング体験も大きな変化を遂げていくことが見込まれます。
この記事では、eコマースの意味やビジネスモデルの特徴と共に、メリットやデメリットをご紹介します。最新の市場傾向についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
eコマースとは?

eコマース(電子商取引)とは、インターネットを通じて商品やサービスを購入・販売する仕組みを指します。オンラインストアやマーケットプレイスを利用して、顧客は自宅や職場から商品を注文し、支払い、配送の手配ができる便利な取引方法です。
eコマースは、EC(Electric Commerce)とも略され、「ネットショップ」や「ネット通販」「ネット販売」と同義で使われます。
eコマースのトレンドと統計

eコマースのトレンドを把握することで、競争力を維持し、変化する顧客ニーズに応えることができます。ここでは、注目すべき長期的なECトレンドを5つ紹介します。
1. ソーシャルコマースの拡大
SNSが購買行動にますます影響を与え、販売において重要な役割を果たしています。
- 株式会社グローバルインフォメーションの調査では、ソーシャルコマース市場は2024年から2029年の5年間で世界全体で1兆4748億米ドル(約213兆8460億円)の成長が見込まれ、年平均成長率は15.3%に達すると予測されています。
- SNSで顧客と交流することは信頼構築につながり、コンバージョン率の向上を図ることができます。
- 特に若い世代ではGoogle検索よりも、LINE、YouTube、Instagram、TikTokなどが、商品発見の主要なプラットフォームとして新たな検索エンジンの役割を果たしています。
2. モバイルショッピングの人気
モバイルデバイスへの移行により、スマホなどのモバイル端末からのオンラインショッピングが主流となっていることから、モバイルに最適化された体験が求められています。
- Kings Researchによると、世界のモバイルコマース(mコマース)の市場規模は、2023年に約5570億米ドル(約80兆7650億円)を記録し、2031年までに約2兆1106億米ドル(約306兆370億円)に達する見込みです。
- モバイル取引の中でも、モバイルアプリを利用したショッピングが、ブラウザ利用のウェブサイトよりも伸びており、アメリカのモバイルコマース利用者の85%は、モバイルのウェブサイトよりモバイルアプリを好むという調査結果(英語)もあります。
3. AIの活用
eコマース業界でも、AI技術を採用する企業が増えてきています。
- Precedence Researchの調査(英語)では、AIを活用したeコマースの売上は、2025年に約90億ドル(約1兆3000億円)に増加し、2034年には約640億ドル(約9兆2850億円)に達すると予測されています。
- AIは、顧客に最適化した製品紹介や検索結果の最適化などに活用されています。
- カスタマーサポートのチャット機能にAI機能を採用する企業が増えており、売上増加に貢献したとの調査結果(英語)があります。
4. パーソナライズされた体験
顧客の年齢や過去の購入履歴などに合わせてショッピング体験を提供する「パーソナライゼーション」が、リピート客の増加や満足度の向上に影響を与えています。
- 2025年に実施したTwilio(トゥイリオ)の調査では、「リアルタイムでパーソナライズされた体験を受けた場合に購入意欲が高まる」と回答した消費者が、日本で84%、世界で88%にのぼりました。
- eコマースを行う企業の74%がウェブサイトにパーソナライズの仕組みを導入しているとの報告(英語)もあります。
5. 決済手段の多様化
オンラインショッピングでは、依然としてクレジットカード決済が主流である一方、電子マネーや後払い決済サービス(BNPL)も拡大しており、今後も決済手段の多様化が進んでいくと予測されます。
- 総務省の令和6年通信利用動向調査報告書(世帯編)によると、オンラインショッピングではクレジットカードが依然として圧倒的なシェアを誇り、約80%が利用しています。
- 決済手段として電子マネー(PayPayや楽天ペイなど)を使用している割合は43.5%にのぼり、2023年と比較すると5ポイント上昇しています。実店舗でのキャッシュレス決済の普及に伴い、ECサイトでも選ばれるケースが増えていると考えられます。
- 矢野経済研究所の調査では、後払い決済(BNPL)の国内市場取扱高が2025年度に約2兆275億円に達すると予測されており、これは2020年度の約2.3倍の市場規模です。クレジットカードを持たない人やカード情報の入力を避けたい人でも、簡単な情報入力だけで購入できるため、EC事業者にとってはカゴ落ち防止につながるという利点があります。
その他の注目トレンド
- 拡張現実(AR): ARを活用したショッピング体験が、オンラインでの製品の見せ方を革新しています。
- 持続可能性: 持続可能なビジネス慣行を持つブランドが消費者に支持され、企業の生産や物流へのアプローチに影響を与えています。
- ワンクリックの支払い:アカウントにログインした状態でショッピングを行うことにより、ウェブサイトで都度必要となる個人情報入力を省略できるため、購入前の離脱(カゴ落ち)を防ぐことができます。
- 音声の活用:モバイルコマースで音声検索を活用することで、顧客の利便性が高まります。この取り組みはアメリカなどで先行していますが、今後日本でも普及する可能性があります。
eコマースの種類

eコマースのビジネスモデルは主に以下のように区別されます。
BtoB
BtoB(business to business)は、企業同士の取り引きを指します。
企業向けにオフィス用品などの業務用品を取り扱ったり、卸売販売を行うeコマースサイトなどがあります。
BtoBは取引金額が高額であったり、継続的な取引が多いため、安定して長期的な取引ができる大口顧客を獲得できるかが重要なポイントです。
BtoBモデルの典型に、Alibaba(アリババ)があります。Alibabaでは、サプライヤー企業がほかの企業に向けて商品を販売しています。Alibabaの価格がとても安いのは、購入側の企業が小売で利益を出せるような卸売価格に設定されているからです。
BtoC
BtoC(business to consumer)は、企業と一般消費者の取り引きを指します。
多くのネットショップは企業相手ではなく、一般消費者向けのBtoCに分類され、いわゆる一般的なネットショップがこれに該当します。
BtoCモデルの典型としては、Amazon、楽天、Appleなどがあります。
CtoC
CtoC(consumer to consumer)は、消費者同士の取引を指します。
CtoC販売者の大半は企業ではなく、一般的な消費者です。BtoCモデルの典型としては、メルカリなどのフリマアプリ、Yahooオークション、eBay、民泊予約サイトのAirBnb(エアビーアンドビー)などがあります。
CtoB
CtoB(consumer to business)は、個人が企業や組織を相手に商品やサービスを販売することを指します。たとえば、写真家が作品を企業向けに販売することなどが考えられます。
DtoC
DtoC(direct to consumer)は、メーカーが中間業者や小売店を通さずに、自社のECサイトなどを用いて直接消費者に商品やサービスを販売するビジネスモデルです。
DtoCでは、仲介業者や実店舗を介さないためマージンが発生せず、経費が抑えられ、その分商品を低価格で提供できます。また、メーカーが自社で製品を販売することで、製品価格の削減やブランド戦略などを図れるといったメリットもあります。
eコマースのメリット

- 販売範囲が地域に限定されない
- 売上データを活用することで売り上げ増加を図りやすい
- 手軽に始められる
- 24時間365日営業が可能
販売範囲が地域に限定されない
eコマースでは、利用者はインターネットに接続できればどこからでもアクセス可能なため、世界中が販売エリアになるという利点があります。
実店舗の場合は販売範囲を広げようと思うと、店舗を増やすなど大きな負担が発生します。しかし、eコマースであればWebマーケティングや、SEOと呼ばれる検索エンジン最適化の施策を行うことでサイトの認知度やアクセス数を伸ばし、より大きなマーケットに自社の商品やサービスが届けられます。
また、ECサイトを外国語対応にすることで海外からの顧客のアクセスも期待でき、顧客数や販売点数を増加するチャンスが広がるでしょう。
売上データを活用することで売り上げ増加が図りやすい
ECサイトでは訪問するユーザーのデータが収集できるため、売り上げを増加するための対策に活用できるメリットがあります。
ユーザーの年齢、性別、職業、住所、商品の売上傾向など、得られた顧客情報を分析することで、狙ったターゲットによりダイレクトに響くマーケティングが可能です。
たとえば、ターゲットとする年齢層のユーザーがよく訪問する時間帯に向けて販売したい商品のキャンペーンを打ち出したり、新商品を投入するなど、データを活用した売上向上の施策を検討できるでしょう。
手軽に始められる
eコマースでは販売拠点としての店舗設営が不要となり、ShopifyなどのECプラットフォームを利用すれば無料で手軽にネットショップを開店できます。
これまでは、商品を販売するために実際の店舗を構える必要があり、店舗を出店するたびに物件の確保や内装のデザイン、インフラ整備などの手間とコストがかかっていました。しかし現在は、ECサイトを利用して自社のウェブサイト上にオンラインショップを作ったり、楽天などのモールに出店して売上を作りながら、独自の店舗を拡張するという方法も可能になりました。そのため、初めての人でも低リスクで手軽にビジネスが開始できます。
24時間365日営業が可能
eコマースでは、スタッフを置かなくても24時間365日営業を続けてくことができます。実店舗の場合、ユーザーが店舗の開店時間内や営業日に来店できないこともありますが、ネットショップなら実店舗では困難な深夜や休日の営業もできるため、機会損失を防ぐことができます。
eコマースのデメリット
- 競争が激しく差別化が難しい
- 世界中に販売するには多言語化などの準備が必要
- ユーザーが商品に実際に触れて確認できない
競争が激しく差別化が難しい
実店舗であれば、競合の少ないエリアを狙って出店するということもできますが、eコマースではユーザーが多数のネットショップを簡単に閲覧、比較できるため、競争率が高くなります。
ユーザーは商品を購入する際にいくつものサイトを比較して、価格が安いところで購入するため、競合他社との価格競争に陥ってしまいがちです。
価格競争による利益低下を防ぐには、価格だけでなく、自社サイトのブランド力や商品力を向上させ、その魅力をユーザーに効果的に認知させなくてはなりません。
世界中に販売するには多言語化などの準備が必要
国内にとどまらず、世界中に商品やサービスを販売する場合は、eコマース用のWebサイトも英語やターゲットとする地域の言語などに翻訳し、多言語に対応する必要があります。
サイトを他の言語などに多言語化する際は、機械翻訳などを使った不自然な翻訳ではサイトに不信感を抱かれてユーザーが離れてしまい、機会損失につながってしまうリスクがあります。反対に、違和感のない自然な翻訳に仕上げることで信頼感が増し、他の競合サイトと差別化を図れるでしょう。そのため、越境ECを行う場合は、コストをかけてでも翻訳会社やフリーランスの翻訳者など、プロに依頼することをおすすめします。
ユーザーが商品に実際に触れて確認できない
eコマースの最大のデメリットの1つは、商品を実際に見て、触って、吟味することができないということです。そのため、届いた実物と自分が想像していたものが違ったという事態が起こりかねません。特に、ファッション商品の場合は、実店舗で試着することで自分に合ったサイズやスタイルを選べますが、eコマースではそれができません。
こうした問題に対応するために、eコマースの出店者はサイトに商品の写真を豊富に掲載したり、商品の外観や仕様を詳細に伝えるなどの対応を行っています。また、1商品1回まではサイズや色の変更による返品ができる仕組みを取り入れて、顧客が納得いくまで商品を選べるようにしている企業などもあります。
まとめ
世界中に販売エリアを持つことができるeコマースは、実店舗を構える必要がないため、コストを抑えながら運営できるビジネスです。EC市場は現在も拡大を続けており、ショッピング体験も大きく変化しています。スマートフォンやSNSの普及により、モバイルショッピングが主流となった現代では、ソーシャルコマースやAIの活用、多様な決済手段の提供など、消費者のニーズに応える新たな取り組みを実践していく必要があります。特に、顧客一人ひとりに合わせた体験を提供できるパーソナライズドマーケティングは、EC事業を成功させるうえで欠かせない戦略と言えるでしょう。
eコマースビジネスを検討しているなら、初期費用が安く、お店に合わせた柔軟なカスタマイズが可能なeコマースプラットフォームの「Shopify」がオススメです。Shopifyは、豊富な機能やテンプレートを用意しているためECサイトを簡単に構築でき、初めてのECサイト構築にも適しています。
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eコマースに関するよくある質問
eコマースのメリットは?
- 販売エリアを限定せず世界中に販売可能
- データを活用することで売り上げ増加を図りやすい
- 実店舗が不要で手軽に開店できる
- 24時間365日営業が可能
eコマースの意味は?
eコマースとは、、インターネットを通じて商品やサービスを購入・販売する仕組みのことです。日本語では「電子商取引」と訳されることが多く、「ネットショップ」や「ネット通販」などとも呼ばれています。
eコマース、ECは何の略?
eコマースとECは同義で、Electronic Commerceの略です。
eコマースは、なぜ小文字でeコマースと書く?
eコマースが小文字で表記されるのは、科学の分野で電子(Electronic)を「e」と小文字で表記することに由来しています。
eコマースにはどんなビジネスモデルがある?
- BtoB:企業同士の取引を指し、企業向けの商品・サービスの販売のほか、卸売販売を行うeコマースサイトもあります。BtoBモデルの典型であるAlibabaでは、サプライヤー企業がほかの企業に向けて商品を販売しています。
- BtoC:企業と一般消費者の取引で、一般的なネットショップが該当します。BtoCモデルの典型としては、Amazon、楽天、Appleなどがあります。
- CtoC:消費者同士の取引を指します。これには、メルカリ、Yahooオークション、eBay、民泊予約サイトのAirbnb(エアビーアンドビー)などが該当します。
- CtoB:一般の個人が企業や組織を相手に商品やサービスを販売することを指します。たとえば、写真家が作品を企業向けに販売することなどが考えられます。
- DtoC:メーカーが中間業者や小売店を通さずに、自社のECサイトなどを用いて直接消費者に商品やサービスを販売することを指します。
eコマースプラットフォームとは?
eコマースプラットフォームは、ECサイトの開設・運用のために使われるシステムやサービスプロバイダです。このeコマースプラットフォームには、支払い方法、配送サービスなどの仕組みが組み込まれているため、ECに関する知識がなくとも世界中の顧客に製品やサービスを簡単に販売することができます。eコマースプラットフォームの例としては、Shopify、Amazon、楽天などがあります。
文:Norio Aoki