ネットショップを運営するうえで、送料の設定は売上や顧客満足度を大きく左右する重要な要素です。少し高すぎれば購入をためらわれ、安すぎれば利益を圧迫します。さらに、送料無料や一定金額以上の送料無料ラインなど、戦略的な設定によって購買単価やリピート率を高めることも可能です。
この記事では、送料の決め方を具体的に解説します。代表的な送料のパターン、送料無料の仕組みやライン設定の手順まで、実践的な方法をわかりやすく紹介します。ECショップの収益性を守りながら顧客満足度も高めるための送料戦略を、一緒に見直してみましょう。
送料の決め方:送料設定の5つのパターン

1. 全国一律の送料設定
全国一律の送料設定は、商品のサイズや重量、配送方法に関わらずどの地域へも同一料金で発送する設定で、顧客にとっても事業者にとってもわかりやすいため、多くのECサイトで選ばれている方法の一つです。
ただし、配送業者は北海道や沖縄など遠方への配送を高めに設定している場合が多いので、注意が必要です。
2. 配送地域別の送料設定
配送先までの距離に応じて送料を設定する方法です。全国一律料金とは異なり、地域ごとに金額を変えられるため、ショップ側の負担を抑えられるのがメリットです。
しかし、商品の発送地から離れている場所に住む顧客の場合、顧客の送料負担が増加するため、送料を一律にしている、あるいは送料負担の少ない競合に流れてしまう可能性があります。このような事態を避けるために、発送地から離れた地域の顧客に対しては送料を低めに設定し、送料の一部を事業者が負担する手もあります。
3. 配送手段別の送料設定
宅配便やメール便、速達便、クール便など、配送方法ごとに送料を設定する方法です。たとえば、宅配便は1,500円、メール便は500円、速達便は2,000円といった形で設定します。こうすることで、配送方法によるコスト差を適切に反映でき、事業者の負担を抑えられます。
さらに、顧客が自分で配送方法を選べるようにすれば、それぞれのニーズに対応でき、満足度の向上にもつながります。4. サイズ・重量別の送料設定
商品のサイズや重量によって送料を変える方法は、物流コストを正確に反映できる現実的な設定です。宅配業者に支払う配送料がサイズや重さによって決まるので、事業者にとっても買い手にとっても公平な送料の決め方だといえます。
一方で、商品ごとのサイズや重量の測定や登録作業が必要になるため、商品点数が多い場合は、商品ごとの情報の登録に加え、変化する配送会社の送料のアップデートなど事業者に負担がかかるかもしれません。
サイズや重量ごとに送料を設定する際は、金額の詳細を顧客の目につきやすい場所に明記するのが良いでしょう。具体的には、サイズが60以上80未満かつ重さが2kg以上5kg未満の場合は700円、サイズが80以上100未満かつ重さが5kg以上10kg未満の場合は1,500円などと記載します。また、サイズが80未満であっても、重さが5kg以上の場合は送料設定の高いほうを採用するといった細かい部分も記載すると、顧客は安心して商品を購入できるでしょう。
5. 送料無料ラインのある送料設定
顧客の「送料無料で利用したい」という気持ちと、販売者側の「配送コストを抑えたい」という思いを両立させるために、多くのネットショップで採用されているのが、一定額以上の購入で送料を無料にする方法です。
この方法を導入すると、送料無料の条件を満たすために顧客が「ついで買い」をしやすくなり、一人あたりの購入単価を上げられる効果があります。購入単価が上がることで、1回の注文あたりの利益額も増え、その利益で配送コストを相殺しやすくなります。
また、一部のECサイトでは、離島や北海道、沖縄など配送コストが高くなる地域については、送料無料ラインを他の地域より高めに設定する工夫も行われています。これにより、コスト負担のバランスを取りつつ顧客満足度を維持できます。
6. 送料完全無料
地域や商品サイズ、発送手段を問わず、送料を完全無料にする設定は、商品代金以外の負担がなくなるため、顧客にとって最も魅力的な送料設定といえます。心理的ハードルが下がり、購入に踏み切る顧客が増える効果も期待できます。
しかし、これを常時適用すると配送コストがすべて販売者側の負担となり、利益を圧迫するリスクがあります。長期的に続ければ、事業継続が難しくなる可能性も否定できません。
そのため、完全送料無料を実施する場合は、新商品の発売や周年記念、季節セールなどのキャンペーン期間に限定するのが効果的です。短期間でも送料無料を打ち出すことで注目度を高め、新規顧客の獲得や初回購入の促進につながります。さらに、購入した顧客が商品を気に入りリピーター化すれば、キャンペーン終了後も継続的な売上につなげられるでしょう。
送料の設定基準3つ
ここで送料を設定する際に考慮するべき3つの点を紹介します。1. 利益率
EC事業の送料は、一定の利益率を確保できる金額に設定するのが不可欠です。利益率とは、商品の売り上げに対する利益の割合です。具体的には、商品に対して顧客が支払った金額(商品価格+送料)から製造コストや仕入価格などの原価、送料や梱包資材費などの経費を差し引いた後に、どれだけの利益が残るかをパーセンテージで表したものを指し、利益÷商品の送料込みの価格×100で求められます。
たとえば、商品を送料込みで4,500円で販売し、原価が2,000円、その他の経費が1,000円かかる場合、利益は、1,500円(4,500円-(2,000円+1,000円))となり、利益率は約33%(1,500円÷4,500円×100=33.33)となります。
利益率を基準に送料を設定する場合、まずは目標とする利益率を決める必要があります。利益率の目標を設定した後は、配送コストや人件費などの経費から逆算して適切な送料金額を決定します。
2. 競合ショップ
同じジャンルの商品を扱っている競合ショップの送料も、一つの基準となります。見込み客の多くは、送料の安いショップで商品を購入したいと考えているため、競合ショップの送料の相場から大きく離れた金額を設定するのは避けたほうが無難です。送料の相場は商品ジャンルごとに異なる傾向にあるため、自社のネットショップで複数の商品ジャンルを取り扱っている場合は、競合ショップの送料の相場をジャンルごとに確認しましょう。
また、競合ショップの送料無料ラインについても把握しておいてください。仮に商品ごとの送料を競合ショップより低く設定しても、送料無料ラインが高ければ見込み客が競合ショップへ流れる可能性があります。
なお、送料で競争優位性を得ることは重要ですが、過度に設定金額を下げると利益の確保が厳しくなるため、バランスを考えるようにしましょう。
3. 配送業者
顧客のもとに届ける商品が同じものであっても、事業者が支払う配送料の金額は配送業者によって異なるため、送料を決める際は配送業者についても考える必要があります。配送料が高い業者に依頼すると、かかるコストを補うために顧客から徴収する送料も高くする必要が生じます。
ただし、送料が安ければよいというわけではありません。送料を安価に抑えられたとしても、配送に時間がかかってしまったり荷物の追跡ができなかったりすると、顧客が不便や不安を感じる可能性があります。配送業者を選ぶ際は配送コストに加えて、追跡サービスの有無や配送日数などの要素も考慮に入れる必要があります。
送料無料の場合の送料の負担

販売価格に送料を含める
商品の販売価格に送料分を上乗せすることで、表記上は「送料無料」にできます。実際は顧客が送料を負担していますが「送料無料」と表記されているため、お得感を演出できます。一方でこの方法を使うと、送料を含んだ価格設定にしている分商品が高額に見えてしまい、より安い値段を提示している競合ショップに見込み客が流れてしまうリスクが発生します。
ショップが送料を負担する
販売者側が売り出しを目的に送料を負担しているケースもあります。「送料無料」をマーケティング戦略として活用して多くの人に商品を購入してもらい、得られた利益によって送料分を補う仕組みです。
送料無料を有料会員向けサービスにする
有料会員向けの特典として、一部の顧客にのみ送料無料を提供する方法です。送料分は会員料にあらかじめ組み込み、配送コストを直接的に補填できる仕組みとします。
この方法は、会員登録による継続的な収益と、会員限定特典の魅力によるリピート率の向上が見込めます。結果として、売上増加とLTV(顧客生涯価値)の向上によって、送料無料によるコスト負担を十分にカバーできる可能性があります。
送料無料ラインを決める手順

1. 送料無料ラインの目安を把握する
まずは自社と同じジャンルの商品を扱っている競合ショップが送料無料ラインを何円に設定しているのかを把握する必要があります。競合ショップより送料無料ラインを低めに設定すれば、送料を無料にしたい消費者に利用されやすくなります。競合ショップの送料を調べたうえで優位性を得られそうであれば、送料無料ラインを低めに設定することをおすすめします。
ただし、送料を無料にした分を超える売り上げが見込めないと赤字になるため、注意しなければなりません。送料無料ラインを低めに設定し、競合ショップの販売数を上回ったとしても、利益を上げられなければネットショップの運営を続けていくのが困難となります。
2. 安い配送業者を選ぶ
安い配送料金の業者を選べば、配送コストを抑えられます。少しでも安い配送業者を選ぶためには、それぞれの料金を細かく比較する必要があります。実際に国内で広く利用されている配送業者を利用して、60サイズの荷物を東京から大阪まで配送すると送料がいくらになるのかを比較しましたので、参考にしてください。
- ヤマト運輸(2kgまで):1,060円
- 佐川急便(2kgまで):1,040円
- 日本郵便(25kgまで):990円
- 西濃運輸(2kgまで): 1,122円
- 福山通運(2kg以下):1,120円
上記条件の場合、日本郵便を利用すると配送コストを最も抑えられることがわかります。しかし、商品のサイズや重さ、配送方法、配送先によって送料は変動します。取り扱っている商品の規格で料金を細かく調べ、最も安価で利用できる配送業者を選びましょう。
3. 利益を確保できるように販売価格を調整する
送料無料ラインを決める際、送料を無料にしても利益を確保できるように商品の販売価格を調整する必要があります。送料を無料にする場合、配送業者に支払う料金に加えて梱包資材にかかる費用も販売者側が負担しなければならないため、利益が減ってしまうケースがほとんどです。こうした事態を避けるために、送料を無料にする場合は販売価格から梱包や配送にかかるコスト、商品原価を差し引いて、どれほどの利益が得られるのかを必ず確認しましょう。得られる利益を把握したうえで、競合ショップより低めに送料無料ラインを設定するのかなどを最終的に決定します。
まとめ
送料設定は、ネットショップの収益に直接影響を与える重要な要素です。利益率や競合ショップの送料設定、利用する配送業者の配送料を考慮して適切な料金を設定することで、顧客の送料負担を減らしつつ、自社の利益を確保できます。
ネットショップの送料パターンには、全国一律の送料設定のほか、配送地域別や重量・サイズ別の送料設定などがあります。自社ネットショップの利益率や顧客の利便性などを総合的に考えたうえで、どの配送方法・配送業者が適しているのかを判断しましょう。
ネットショップで商品を販売するなら、Shopifyがおすすめです。Shopifyで構築したECストアでは送料を全国一律、一定の購入額以上無料など多様に指定できます。離島などの一部地域のみ料金設定を変えるなども可能で、それぞれのニーズに応じて細かく調整できます。無料体験も実施していますので、ぜひお気軽にShopifyをご活用ください。
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よくある質問
ネットショップの送料無料ラインの決め方は?
商品の原価と配送コストを計算し、必要な利益を出せる金額を算出したうえで送料無料ラインを決定します。ポイントは、送料無料にしても利益を確保できるように調整することです。
なぜ送料無料にできるの?
送料を販売者側が負担する、あるいは販売価格に送料を含めることで、送料を無料にすることができます。
Shopifyで利用できる送料設定のパターンは?
Shopifyの送料設定(方法)は、以下のとおりです。
- 全国一律送料
- 地域別送料
- 完全送料無料
- 一定金額以上の購入で送料無料
- 商品の重量別送料
- 商品の価格別送料
- 特定の商品別送料(クール便や大きなサイズの商品)
- ローカルデリバリー(直接配送)
- 店舗受け取り
- 海外発送