予約販売は、商品の需要を事前に把握し適切な在庫を準備できる点が魅力です。この記事では、ネットショップに予約販売を取り入れるメリットとデメリット、Shopify(ショッピファイ)で予約販売を設定する方法や役立つ予約販売アプリを紹介します。
これから新商品の販売を考えている方や、新しいサービスのリリース予定がある方は参考にしてください。
予約販売とは
予約販売とは、まだ発売されていない商品や、在庫のない商品・サービスの注文を事前に受け付け、販売日または入荷日に購入者に送る販売方法です。デジタルコンテンツや小売商品、アパレルなどさまざまな業界で活用されています。
受注数しか作らない完全受注生産とは違い、予約を開始する時点で、ある程度商品やサービスの生産が始まっており、予約販売分と通常販売分が分けられているのが特徴です。人気の度合いによって生産数を増減させたい場合や、プロモーションを早めに行って商品を周知させたい場合などに有効です。
予約販売の種類:2種類の支払い方法
即払い式の予約販売
予約販売において最も一般的なのは、通常販売と同じ即払い式です。商品発送前に支払いが完了するためキャンセル率が低く、売上予測が立てやすいことがメリットです。
一方で、カート内で通常注文と予約注文が混同するため、配送費の計算が複雑になり顧客からの問い合わせなどが増える可能性があります。また、支払いが完了していることから、発送の大幅な遅延や商品の不備が発生するとブランドや企業の信頼を失いやすいというデメリットもあります。
そのため、即払い式で予約販売を行う場合は、自然災害などの合理的な理由がない限り、商品の確保や発送などを優先的に行うようにしましょう。
後払い式の予約販売
後払い式の予約販売は、予約時には支払いは発生せず、販売開始時などに代金の請求を行います。販売開始日に顧客に支払いリンクを送信し、オンラインで支払い手続きを完了してもらう流れが一般的です。
顧客の購入予算に与える影響が少ないため、通常商品の売り上げに影響を与えにくいというメリットがあります。また、支払い前であることから、製造トラブルなどで商品の生産に遅れが出ている場合や、仕様変更などが生じた場合にも顧客の理解が得られやすく、即払い式に比べ信頼低下などのリスクを減らせます。
一方で、簡単にキャンセルできる状況のため、最終的な販売数と利益が予想と大きくずれてしまう可能性もあります。定期的な関連情報の配信などで興味を維持させる施策を行うと良いでしょう。
予約販売のメリット
売り上げの予測と調整ができる
予約販売を行うことである程度の販売数が事前に把握できるので、在庫不足や余剰在庫を未然に防げます。また、予約数から通常商品の販売数のめども立つため、全体の売り上げもある程度予測できるほか、売れ筋商品の在庫数を増やすなどの調整もできます。
例えばアパレルの場合、同じ商品でも色やサイズによって予約数が異なる場合、通常販売の商品数も人気のある商品に合わせて調整できるでしょう。売り上げや需要の見通しが立つことで、製造やマーケティングの予算を効率的に利用できます。
在庫切れによる機会損失を避けられる
顧客がネットショップを訪問したタイミングで在庫がなかったとしても、予約を受け付けることで機会損失を防げます。また、予約状況を見てから追加発注することができるため、人気商品のピークを見誤り余剰在庫を作ってしまうリスクも減らすことができます。
商品が在庫切れになってしまった場合、追追加生産が決定しているのであれば次回入荷予定に関する情報を明記して予約受付を行いましょう。
販売開始に合わせた業務調整ができる
予約販売で全体の数を予測できるので、それに合わせて業務調整を行えます。発売前に予約を締め切り、発売日は発送業務だけに集中できるようにするなど、複数の作業が同時期に重ならないようにして人的ミスを削減したり、繁忙期のオーバーワークを避けたりできます。
例えば、お正月飾りなど繁忙期が一点に集中するようなイベント商品などは、予約数でおおまかな生産数が予測できたら早めに発送準備をしておくことで、業務の分散などが可能になります。
顧客の購入意欲を上げられる
予約販売を行うことで、顧客に人気商品のイメージや在庫がすぐなくなるかもしれないという焦燥感を与え、購入意欲を刺激できます。また、予約販売限定パッケージなどの特典をつけてお得感を出すことでも予約を促せるでしょう。
例えば、新作ゲームの予約販売では、先行予約で限定アイテムを付与したり、予約特典でお店のポイントを追加したりすることで顧客の購買意欲を高めています。
予約販売を導入するデメリット
トラブルから顧客の信頼を失う可能性がある
実際の商品がそろっていない状態で予約を受け付けるため、製造元都合で在庫を予約数分準備できない、材料変更により予約時の仕様とは変わってしまうなどのトラブルが起こり得ます。
顧客は予約した商品は担保されていると考えるため、予定通り商品が届けられなかったり、予約時のイメージと違ったりすると、不信感を抱くだけでなく、支払いトラブルに発展する可能性があります。顧客によるネガティブな口コミによって、他の潜在顧客に悪い印象を与え、売り上げの減少や、ブランドや企業全体の信頼低下につながることもあります。
そのため、予約商品は通常販売よりも注意深い生産管理や販売体制が求められます。
キャンセル数が多くなる可能性がある
後払い式では、支払い義務が発生していない期間が長期になるためキャンセル率が高くなる傾向にあります。キャンセル数が増えると、余剰在庫が発生し、在庫管理コストや廃棄リスクが高まります。
例えば、アパレル商品では、キャンセル状況によっては商品のサイズ展開に偏りが出て在庫処分が必要になるかもしれません。
予約販売を行う場合は、予約商品のキャンセル率もある程度予測して在庫の準備を行うと良いでしょう。
予約数によって業務負担が増加する
予約数が多くなると、通常業務に加えて、予約商品用の在庫管理や発送準備、顧客管理などの業務が増え、バックヤードの負担が増加します。発送するまでに商品を保管するスペースや人的コスト、時間が多く取られるだけでなく、負担増加によるミスが発生するリスクも高まります。
人員や時間、保管スペースなどから予約数の上限を設定するなど、予約販売時には業務負担や環境整備なども考慮するようにしましょう。
支払いトラブルの可能性が高まる
予約販売では、支払いと商品を届けるタイミングに開きがあるため、支払いトラブルが生じる可能性が高まります。
クレジットカードの場合、予約時には有効だったカードの期限が切れていたり、カードが解約されていたりすることで、決済できないことがあります。そのような場合の対応はどうなるのか、決済会社に確認しておきましょう。
顧客にも決済のタイミングを知らせたり、キャンセルポリシーを周知したりするなどの対策を行いましょう。
代引きの場合は、顧客都合で受け取りを拒否され、配送や返送の費用を販売側が負担することになり、損失につながります。発送前に確認メールを送る、予約商品は代引き不可とするなどの対策を検討しましょう。
なお、商品発送完了後にしか商品代金の請求ができない決済会社もあるため、利用する決済会社の要件を確認しておくことも大切です。
Shopifyで予約販売を設定する方法
Shopifyで予約注文を受け付けるには、Shopify App Storeから予約販売アプリをインストールし、管理画面で予約販売の設定を行います。
予約販売アプリの設定は、主に以下の手順で行います。
- 予約販売アプリをダウンロード
- 管理画面からアプリの初期設定を行う
- アプリ上で予約販売ルールの設定や商品登録をする
初めての方でも使いやすいアプリが多く用意されています。アプリの詳しい設定方法や使用方法については各アプリの説明を参考にしてください。
また、Shopifyテーマの中にははじめから予約販売機能がついたものもあります。これからネットショップを立ち上げる場合はそういったテーマから選ぶのもおすすめです。
Shopifyの予約販売システムアプリ3選
Shopifyの予約販売アプリは複数ありますが、その中から利用者数が多いものや評価が高いものを3つ紹介します。
Preorder

Preorder(プレオーダー)はShopify Appで多くの高評価を得ている予約販売アプリです。
基本的な予約販売の機能に加えて一部支払いや再入荷メール、在庫管理などを兼ね備えています。Shopifyで無在庫販売を検討しているショップや、予約販売数に上限があるショップなど、低コストで試験的に予約注文を始められます。
日本語を含め多くの言語に対応しているので、海外販売を検討している場合は特に実用性が高いでしょう。
- 制限ありプラン:無料または$1/月
- 無制限プラン:$19/月(または$168/年)
シンプル予約販売

シンプル予約販売は、日本製の予約販売アプリです。その名の通り、シンプルな設計であるため初心者でも簡単に操作でき、日本語による導入サポートがあるので言語の心配もいりません。
予約販売開始前、予約販売中、予約販売終了時など予約ステータスに合わせた表示の設定や、予約商品が購入された際の自動タグ付け、複数商品の予約販売、ノーコードでのボタン表示などが設定できます。月額費用もお手頃なので、初めて予約販売に挑戦する方におすすめです。
- Basic Plan:$9.99/月(インストール日から7日間無料)
RuffRuff予約販売

RuffRuff予約販売は、日本語対応の予約販売アプリです。
予約販売に関する基本的な機能だけでなく、期間限定販売やVIP会員限定販売、先行割引そしてブラックリスト会員への販売制限など、販売に関するさまざまな機能が搭載されています。英語や中国語、韓国語などさまざまな言語にも翻訳対応しているので、越境ECにも向いています。
また、プロプランの契約をすれば、予約販売手数料0%で商品の売り上げをそのまま利益として受け取ることが可能です。年間契約による割引もあるので、予約販売を本格的に行いたい方におすすめのアプリです。
- スターター:$9/月(予約販売手数料:3%)
- ベーシック:$52/月(予約販売手数料:1%)
- プロ:$199/月、または$1,990/年(予約販売手数料:なし)
予約販売を成功させるポイント
さまざまな視点が伝わる映像や画像を準備する
予約販売の時点で商品のイメージがしっかりと伝わるように、さまざまな角度から撮影した動画や画像を掲載するようにしましょう。サイズ感や雰囲気などを予約販売の時点で視覚的に伝えることで、顧客が使用イメージを持ちやすくなり、予約につながります。
例えば、アパレル撮影の場合は、着用して座っている様子など動きのある写真を載せることで、服の伸びやしわの入り方、着用感を具体的に伝えられます。画像編集なども活用し、質の高い画像や動画を準備しましょう。
興味をひく予約特典をつける
予約商品限定のアイテムや割引などの特典をつけることで、顧客の興味をひくことができ、キャンセルを防ぐこともできます。また、ショップ内で利用できる割引を付与したり、予約商品に関連する消耗品などを特典にしたりすることで、さらなる購入につなげることも可能です。
例えば鍋の予約販売では、自社サイトで販売している使い捨ての落とし蓋を予約特典としてつけることで、お得感や利便性をアピールでき、予約の促進に効果的です。さらに、そのあと同じ落とし蓋をリピート購入してもらえる可能性も高まります。
有料広告を活用する
有料広告は、狙いたい顧客層や地域にピンポイントでアプローチできます。例えば、Instagram広告などのSNS有料広告を利用することで、アルゴリズムによって関心の高いユーザーに効率良く予約販売を促せます。
ウェブサイトの広告掲載は、配信地域を限定できるので、気象や県民性を考慮したマーケティングが可能です。
例えば、保温系のアイテムを予約販売する場合、北海道や東北地方などの寒い地方に限定して広告を出すことで、効率的に予約商品の宣伝ができるでしょう。
ファンコミュニティと交流する
新商品などに強い興味を持つファンコミュニティと交流することで、企業やブランドへのロイヤリティが高まり、予約販売の告知にも注目してもらいやすくなります。
定期的なメルマガ配信やSNSを活用したアンケートなどを通じて信頼関係を築いておくと良いでしょう。
また、ロイヤリティが高まっているユーザーが自発的に投稿やシェアを行うUGC(ユーザー生成コンテンツ)は、同じ興味関心を持つ潜在顧客へのアピールが期待でき、予約数の増加につながります。
インフルエンサーマーケティングを利用する
インフルエンサーマーケティングは、知名度を利用して広く宣伝できるだけでなく、効率的にターゲット顧客の関心を集められます。
予約販売前にインフルエンサーに商品を提供し、使用感やおすすめポイントを宣伝してもらいます。インフルエンサーが商品の魅力を伝えることで、効果的に拡散できるだけでなく、「この人が紹介している商品なら使ってみたい」とそのファンやフォロワーに興味を持ってもらえます。
予約販売をする際の注意点5つ
1. 予約数の管理を徹底する
1人あたりの予約可能数を設定しておきましょう。予想以上の注文による在庫不足や納期遅延を防げます。また、転売目的の大量購入防止にもつながるので、予約数の制限機能を導入しておくと安心です。
2. 商品確保や価格変動への対応方法を決めておく
予約販売は、メーカー都合や天候などにより、商品や部材の確保が難しくなるリスクがあります。また、予約受付後に原材料費が高騰するなどの価格変動リスクにも備える必要があります。事前に対応方針を決めておくことで、トラブル発生時に顧客の信頼度や満足度を損なわずに済むでしょう。
3. 予約特典による利益の減少に気をつける
予約商品限定の特典をつけることは販売促進につながりますが、その特典が利益を圧迫しないように注意しましょう。特典の原価や生産、梱包や発送などにかかるコストを事前に把握し、利益率をしっかりと算出することが大切です。
4. 通常商品との同時購入時の配送ルールを決めておく
予約商品と一緒に通常商品が同時購入された際、まとめて発送するのか、通常商品を先に発送するのか、あらかじめ決めておきましょう。別々に発送するほうが顧客にとっては親切ですが、その分送料がかかるので、送料を2回分請求するのか、予約販売分のみ送料無料にするのか、などの配送ルールを事前に決めて、明記しておくことが大切です。
5. 予約キャンセル・受け取り拒否を防ぐ仕組みを検討する
予約商品は、購入・決済・配送のタイミングにズレがあるため、予約キャンセルや受け取り拒否につながることがあります。また、タイムラグの影響でクレジットの有効期限が切れてしまったり、引っ越しにより配送先が変わっていたりするトラブルも考えられます。
こうしたリスクを防ぐために、「予約商品のキャンセルは不可」と明記したり、予約内容についてメールを送ったりしましょう。
支払いトラブルを未然に防ぐためには、事前決済を必須にする対策が良いでしょう。
まとめ
予約販売をすることで、商品の需要を予測し生産数を調整したり、在庫切れによる機会損失を防いだりできます。魅力的な商品写真の使用や予約特典の付与以外にも、SNSマーケティングも活用して予約注文の数を増やしましょう。
ただし、予約数を無制限にしてしまうと在庫不足や納期遅延などのトラブルが発生することがあります。業務負担や対応可能な生産・在庫体制も考慮して、上限数を設定しておきましょう。
Shopifyでは予約販売アプリや予約注文に対応したテーマを使うことで、簡単に予約販売の設定ができます。予約販売をECサイトで行いたい方はShopifyをお試しください。
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よくある質問
予約販売と受注生産の違いは?
予約販売と受注生産の違いは、注文受付時に商品の生産が始まっているかどうかにあります。予約販売は、商品発売前に注文を受け付けますが、商品の生産はすでに始まっています。また、一般販売分の予定生産数も決まっているのが特徴です。一方で、受注生産は注文数のみしか生産しません。
なぜ予約販売をするの?
予約販売をする目的は、需要を予測して生産数や売上予測を立てて発注数を最適化し、余剰在庫や在庫切れを防ぐことです。また、予約注文を受け付けることで在庫切れによる機会損失を防ぐ目的もあります。
予約販売の決済方法は?
予約販売の決済方法は主に2つあります。
- 決済時に支払いが完了する「即払い式」
- 予約後に支払いを行う「後払い式」
即払い式の予約販売のメリットは?
即払い式の予約販売のメリットは、予約時に支払いが完了するためキャンセル率を低くできることです。キャンセル率が低いと、売上予測が立てやすく、在庫処分のリスクも少なくなります。
Shopifyで予約販売は行える?
Shopifyで予約販売は行えます。予約販売機能のついたテーマを使用してECサイトを立ち上げるか、予約販売アプリを使うことで、予約販売を開始できます。
文:Momo Hidaka イラスト: Eugenia Mello