絵やイラスト制作のためのアプリやソフトが手軽に手に入るようになり、作品は作りやすくなりましたが、自分で描いた絵を売れるサイトや絵の売り方がわからない人もいるでしょう。この記事では、オンラインで絵を売る方法やおすすめのサイト・アプリ、絵を売るコツや相場価格、注意点などを紹介します。
絵を売る方法4選

1. 原画やプリント品を販売する
絵を売る方法として最も簡単なのは、自分が描いた絵の現物をECサイトを通して販売する方法です。作品のサイズや形態(原画かプリント品か)は制作者が決定します。
例えば、キャンバスに描いた一点物を販売したり、高品質なプリント品を制作し、複数点販売したりすることも可能です。ECサイトで販売する際は、作品の良さが伝わるような商品写真を撮影し、商品の詳細とその価値が伝わる商品説明を付けることで、顧客を引きつけやすくなります。
2. 絵のデータを販売する
ダウンロードできるデジタルコンテンツとして絵を売る方法もあります。販売者は配送の手間などを省くことができ、購入者は送料の負担なくアートを手にすることができるというメリットがあります。
二次使用が可能か、可能な場合クレジットの記載の要否や追加料金がいくらになるかなど、使用規定も忘れずに設定しましょう。
素材として提供する場合は、企業のパンフレットやホームページに使えるイラストをJPEG・PNG・SVG形式などで販売します。単価が低くなりがちなので、汎用性の高いイラストを多く制作して素材販売サイトへ登録するなどの工夫が求められます。
3.自分の絵を使ったオリジナルグッズを制作し販売する
自分の絵をプリントしたオリジナルTシャツや、スマホケースなどのグッズを販売する方法もあります。Printful(プリントフル)のようなオンデマンド印刷サービスを利用すれば、受注からプリント、出荷まで代行してくれるドロップシッピングでの販売が可能です。オンデマンド印刷では、デザインだけ登録しておけば、実際の商品は注文が入ってから制作する仕組みになるため、初期費用、在庫リスクなしで、手軽に絵を売ることができます。
4. NFTとして販売する
NFT(非代替性トークン)として絵を販売する方法もあります。NFTは、デジタル作品をブロックチェーン上で固有の価値を持つ一点物として、購入者が所有権を証明できる仕組みになっています。
NFTとして販売したい場合は、MetaMask(メタマスク)のようなデジタルウォレットを作成してから、OpenSea(オープン・シー)などのNFTマーケットプレイスを通して作品を出品します。作品が転売された場合にも二次流通収益が作者に入る仕組みがある点がメリットです。
ネットで絵を売るのにおすすめのサイト
Shopify/自社ECサイト
Shopify(ショッピファイ)を使えば、ウェブサイト制作の知識がなくても簡単にネットショップを開業できます。自分が制作した絵を商品としてECショップに並べることができるだけではなく、独自ドメインを取得し、ブランド構築することも可能です。また、商品ページだけではなく、ブログや自身の今までの作品をまとめたポートフォリオなども掲載できるため、顧客に興味を持ってもらったり、自身の作風を的確に伝えたりすることもできます。Pinterest(ピンタレスト)などのSNSとの連携もできるため、SNSマーケティングを行いながら効率的に潜在顧客にアプローチできます。
クラウドワークス/受注販売サイト
クラウドワークスは仕事の発注者と受注者をつなぐマッチングサイトです。絵を販売するには、依頼者の募集案件に応募するほか、プロフィールを公開して依頼を募集することも可能です。販売価格は案件によって提示されている場合と提案制の場合があります。システム手数料は報酬額に応じて5〜20%です。
ココナラ/受注販売サイト
ココナラは、個人のスキルを売り買いできるサイトで、受注からサービス提供まで全てオンラインで完結します。事前に細かく料金や納期などを設定して販売するほかに、見積もり依頼を受けることも可能です。手数料は報酬額の22%で、サービス売上3,000円以上から振り込み手数料が無料になります。
SKIMA/受注販売サイト
SKIMA(スキマ)は、個人向けにイラストやロゴ制作を提供するサービスです。自分でサービスを出品するだけでなく、購入者の依頼に応募することもできます。販売手数料は個別販売総額(出品金額とオプション料金の合計)に対して11〜22%です。
Adobe Stock/素材サイト
Adobe Stock(アドビストック)は、画像、ビデオ、オーディオなどの素材を販売できるサイトです。販売するにはAdobe Stockアーティストとして登録する必要があります。登録条件は、18歳以上であることと、アップロードするファイルの唯一の所有者であることです。画像が購入されると販売額の33%のロイヤリティを得られますが、支払いを受けられるのは獲得したロイヤリティが25ドルを超え、最初の販売から45日経過している場合です。
イラストAC/素材サイト
イラストACはフリー素材サイトとしての知名度が高く、作品の閲覧数やダウンロード数が得やすいサイトです。企業からの仕事依頼につながることもあり、サイドビジネスとして始めるのにもおすすめのサイトです。絵のアップロードは無料で行うことができ、ダウンロードごとに4.36ポイント(4.36円)の報酬が発生する仕組みで、5,000ポイント以上たまると換金できます。
PIXTA/素材サイト
PIXTA(ピクスタ)では、イラストのほか写真や動画、音楽なども販売可能です。出品には入門講座・テストの受講が必要で、著作権や販売ルールを学べます。報酬率はクリエイターランクや購入形態(単品/定額制)によって異なり、単品購入は22〜58%、定額制は0.27〜0.85クレジットです。10クレジット以上から換金(1クレジット=110円)できます。
絵をネットで売るコツ

流行やニーズに合わせた絵を制作する
季節やイベントごとに需要が高まる絵を制作すると売れやすくなります。たとえば、クリスマスカードや年賀状用のイラストなどは毎年ネット上で多く検索されます。また、絵にもトレンドがあるため、流行しているテイストやテーマを取り入れるのも効果的です。
SNSを活用する
Instagram(インスタグラム)やPinterestなどのSNSを活用することで、多くの人の目に触れやすくなります。将来絵が必要になったときに思い出してもらえるよう、定期的な投稿やフォロワーとの交流を大切にしましょう。Instagramのショッピング機能やプロフィールリンクからECサイトへ誘導するなど、ソーシャルコマースを活用する方法もあります。プロフィールの工夫や継続的な投稿、フォロワーとのコミュニケーションなどインスタマーケティングに力を入れることで、自分の絵に興味を持ってくれるフォロワーを獲得し、絵を売ることができます。必要に応じてFacebook広告などのSNS広告を利用するのも効果的です。
ポートフォリオを充実させる
作品をまとめたポートフォリオは、購入を検討する人に安心感を与えます。販売実績や作品のテイストがわかる内容にしておくと、企業などからの依頼にもつながりやすくなります。PDF形式にしたり自社サイト上に設置したりして、すぐに見せられる形で用意しておくのがベストです。
希少性を演出する
絵をネットで売る際には、希少性を演出すると付加価値を高めることができます。これは希少なものほど購買意欲がわくという心理効果、いわゆる「スノッブ効果」を利用したものです。
例えば、作品を数量限定や期間限定で販売すると、希少性が高まり、特別感が生まれます。データであっても、一点物や数量限定作品として販売することは可能です。サイト上で、「再販は行わない」と明記するなど、作品の限定性をしっかりと伝えることで、絵の価値が高まり、購入してもらいやすくなります。原画やプリント品には直筆サインやシリアルナンバーを入れると、さらなる付加価値を演出できます。
額装付きにする
額装付きで販売すれば、届いたそのままの状態で飾れる利便性があり、購入者の満足度も高まります。作者が選んだ額装なら、作品の世界観に合いやすく、より魅力的な印象になります。額装によって絵の印象が大きく変わるため、販売する際は額縁の色や素材にもこだわることをおすすめします。自分で額を選びたい顧客のために、オプションにするのもいいでしょう。
絵を売る際の相場

一点物の相場
オリジナルの一点物の絵の相場は、数千円〜数百万円と幅広いです。人気、材料費、制作時間、需要などで単価が変動します。最初は、収入が労力に見合わないかもしれませんが、人気が高まれば単価は上がります。
受注販売の相場
自分で単価を決められるため、好きな金額を設定できます。例えば、結婚式のウェルカムボードや似顔絵制作などは3,000〜15,000円程度が相場です。制作物の内容やサイズ、制作者の人気によっても大きく金額が異なります。
イラスト素材の相場
イラストを素材として売る場合、1点あたり数円〜500円程度が相場です。1点あたりの価格は低いですが、人気のあるイラストは多数ダウンロードされるため、販売総額が上がります。サイトによってはポイント制を導入しており、ある程度ポイントが貯まらないと換金ができない場合があります。
オリジナルグッズの相場
オリジナルグッズ販売の場合、グッズの種類により相場は異なります。Tシャツなら3,000円程度です。販売価格は自分で決められるため、グッズの料金に絵の制作料金を上乗せして販売しましょう。
ネットで絵を売る際の注意点
著作権の帰属先を明確にする
ネットで絵を売る際は、著作権の帰属先を明確にしておくことが大切です。販売しても著作権は作者にあるのが原則ですが、購入者が誤って自分に権利があると思い込むケースもあります。トラブル防止のため、商用利用の可否や著作権譲渡の有無は事前に伝えましょう。
また、一部の販売サイトでは、出品時に著作権が運営側へ移る規約があるため、自社サイト以外で販売する場合は利用規約をよく確認する必要があります。著作権を譲渡してしまうと、同じ絵をグッズ化することなどができなくなる場合もあるので注意が必要です。
さらに、有名キャラクターのイラストや芸能人の似顔絵を無断で販売することは、著作権や肖像権の侵害に該当します。必ずオリジナル作品を販売するようにしましょう。
販売ルールを明記する
絵を販売する前に、利用条件や制作ルールを決めておくと安心です。たとえば「商用利用OK/NG」「著作権は譲渡しない」「ラフ案の提案は◯回まで」「二次利用は有料」など、細かく明記することでトラブルを避けられます。
納品後に「イメージと違う」と修正を繰り返されたり、作品が無断で使われたりするケースもあるため、事前のヒアリングや条件設定が重要です。購入者と気持ちよく取引をするためにも、ルールの共有は欠かせません。
配送方法に注意する
額装した絵やキャンバス作品などは、配送中の破損を防ぐために丁寧な梱包が必要です。ヤマト運輸の「アートボックス」や「美術便」など、アート専用の配送サービスを活用すると安心です。
ポスターやプリント品は、筒状の段ボールに入れて送るのが一般的です。作品の形状や素材に応じた梱包を心がけましょう。
確定申告を忘れない
絵が売れて収入が発生した場合、所得によっては確定申告が必要になります。会社員の場合でも、給与以外の所得が年間20万円を超えると申告義務が発生します。画材費や送料、販売サイトの手数料などは経費として申告することが可能です。収支を記録しておきましょう。
本格的に活動する場合は、個人事業主として開業届を提出し、青色申告制度を利用することで節税につながることもあります。
まとめ
絵を売るには、ネットショップでの販売、素材販売など、様々な方法があります。
とくに最近では、スマホやタブレットで描いた自作の絵を売ることも簡単になり、趣味でお金を稼ぐ方法や、副業として始める人も増えています。
絵やイラストが得意な人は、この記事を参考に絵を売る知識を身につけてアーティスト生活をスタートさせましょう。
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よくある質問
自作の絵をネットで売るベストな方法は?
自作の絵をネットで売るのにベストな方法は、売る絵に合ったECプラットフォームを使うことです。アーティストとして作品の価値を高めていきたい場合、自分のネットショップを作ることがおすすめです。Shopifyを活用して自分の作品のネットショップを作れば、価格や販売形態を自由に設定できるだけでなく、ポートフォリオ的に自分の作品を一覧して見てもらうことができます。InstagramなどのSNSからサイトに誘導して、直接販売する方法も有効です。
絵を売るために自分のネットショップを持つメリットは?
自分のネットショップを持てば、価格や販売方法を自由に設定できるだけでなく、作品のポートフォリオとしても活用できます。これまでの作品をまとめて紹介することで、はじめて訪れた人にも作風や得意ジャンルを伝えやすくなります。ブログやSNSとの連携で、集客につなげることも可能です。自分のペースで運営できるため、「絵を売りたいけれど、どこから始めたらいいかわからない」という方にもおすすめの方法です。
NFTの絵を売る方法は?
唯一性が証明されたデジタルアートであるNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)の絵を売るには、MetaMaskのようなデジタルウォレットを作成し、NFTマーケットプレイスでアカウントを開設する必要があります。
文:Taeko Adachi イラスト:Pete Ryan