2024年のBFCM(ブラックフライデー・サイバーマンデー)期間中、ECプラットフォームであるShopifyの加盟店における総売上は、過去最高となる115億ドルを記録しました。これは前年から24%増という大幅な成長です。ブラックフライデーからサイバーマンデーまでの4日間で、世界7,600万人以上の顧客がShopifyを利用したECサイトで買い物を楽しんだというデータもあります。
いわゆる年末商戦スタート地点にあたるブラックフライデーとサイバーマンデーは、アメリカで始まり、日本でも年々定着しつつあります。チラシ・買い物情報サービス「トクバイ」の調査によると「ブラックフライデーで買い物をしたい」と答えた消費者は50.9%にのぼり、平均予算は約1万5千円と報告されています。また、Criteo(クリテオ)が日本の小売業者を対象に行なった調査では、セール期間中に20%以上の売上増となった小売事業者の割合は約35%に達し、平均注文額も上昇していることから消費者が高価な商品を購入しやすくなると分析されています。
この数字は一部の大企業だけの話ではなく、しっかり準備すればスモールビジネスでもBFCMで大きな成果を上げることができます。今回は、2025年のBFCMでセールを成功させるためのコツを紹介します。
目次
1. 顧客との信頼関係を大切にする

BFCMの時期には、ただセールを行うだけでなく、顧客との信頼関係を意識したコミュニケーションが重要となります。顧客はただの買い物ではなく、それ以上の体験や、つながりを求めています。無機質な企業から商品を購入しているのではなく「血の通った人間から買っている」と感じられるような工夫を取り入れてみましょう。
たとえば、顧客が自分の店を選んでくれたことへのお礼を伝えるために、注文確認メールに感謝のメッセージを添えてみましょう。また、ストア内のさまざまな場所や商品パッケージに、顧客へのちょっとしたメッセージをしのばせると、より親しみやすさを演出することができます。
感謝の気持ちを示し、顧客に喜んでもらうには、その他にも次のようなアイデアがあります。
- 注文にギフトやサンプルを同梱する
- 次回購入時の割引クーポンを提供する
- 手書きのメッセージカードを添える
ちょっとした工夫は、セールやホリデーシーズンを超えて、長く効果を発揮します。感謝の気持ちは顧客の信頼につながり、リピーターを増やす大きな力になります。
2. ストアの表示スピードを改善する
ECストアの表示スピードは、購入などの成果に至るコンバージョン率に直結します。ページの読み込みが早ければ早いほど、顧客が商品を購入する確率は高まります。顧客が様々なページを比較してみているBFCMの期間は特に、表示スピードを高速にしておく必要があります。
まずはストアのスピードを測定し、改善点を明確にしましょう。Shopifyを利用している場合は、管理画面にあるサイトスピードレポート機能の利用をおすすめします。自分のストアの表示スピードがどの程度か確認し、サイトスピード改善が必要な場合は、訪問者の多い主要ページから取り組みましょう。
特に画像はストアの表示スピードに大きく影響するため、次のような工夫を行うことをおすすめします。
- 遅延読み込み(レイジーロード)を設定する:ユーザーが画面をスクロールして見たタイミングで表示されるようにし、初期読み込みを軽くする。
- デバイスごとに最適なサイズで表示する:スマホやPCなど環境に応じた画像サイズを用意する。
- 画像のファイルサイズを圧縮する:どのデバイスから見ても美しく、かつスムーズに表示されるようにする。
アプリや不要なスクリプトはサイトスピードを遅くする原因になってしまいます。BFCMシーズンに入る前に、不必要なアプリを削除しておきましょう。また、新しいアプリを導入する際は、本当にビジネスに必要かどうか、しっかり検討してください。
もし技術的な部分に不安がある場合は、Shopifyパートナーに依頼するのも一つの方法です。信頼できる専門家にアドバイスを求めながら、BFCMに向けたストアのパフォーマンス改善を進めることができます。
3. 商品購入までの導線を整える
キャンペーン期間中、顧客がスムーズに欲しい商品にたどりつき、迷わずに購入手続きを終えられるように、ウェブサイト内外の導線を整理し、CRO(コンバージョン率最適化)を行いましょう。
シンプルで分かりやすい導線をつくったり、顧客が商品を知るための入り口を増やしたりすることで、顧客が商品を購入する可能性を高めることができます。特にBFCMの期間中、顧客は膨大な選択肢の中から最適な商品を探しています。顧客がストレスなく商品にたどりつき、スムーズに購入プロセスを終えられるようにするには、次のような工夫が大切です。
- 商品カタログの公開範囲を広げる:Googleショッピングに商品を掲載する、メールではおすすめ商品をパーソナライズして紹介するなど、顧客と商品の接点を増やす
- 発見しやすさを高める:おすすめ機能やパーソナライズアプリを活用して、顧客が関心を持ちやすい商品を優先的に表示する
- ナビゲーションを改善する:サイト構造を明確にし、不要な情報を減らしてスムーズに目的の商品に到達できるようにする
- Shop Payを導入する:ShopifyのECストアでスムーズに決済できるようにする
こうした取り組みは、単に導線を整えるだけでなく、全体のユーザー体験を底上げしてくれます。また、Shopifyのアプリストアには、たくさんのCROアプリが用意されています。顧客が商品を発見しやすくなり、注文数が増えるように、ツールを活用するのもおすすめです。
4. 事前準備を実施する
BFCMを成功させるには、早めの準備が欠かせません。
実際、売上規模によらず、計画的に行動するショップほど成果を出しやすいというデータがあります。米国の企業を対象とした調査では、年間売上1,000万ドル以上のショップの37.5%がBFCMの1〜3ヶ月前から、25%が3ヶ月以上前から準備を始めています。
顧客はBFCMが近づくと、どの商品を購入すべきか、早めに情報収集を始めます。
日本においても「ブラックフライデー」というキーワードへの関心は高まっており、Googleトレンドを見ると、2016年以降、検索数が増え続けていることが分かります。
消費者はAmazon(アマゾン)やGoogle(グーグル)で商品を検索したり、届いたメールを確認したりしながら、価格や条件を比較してお得に買う方法を探しています。つまり、事業者としてはセール期間前に次のような準備を行って、集客を強化しておくことが重要です。
- SEO対策:検索エンジンで見つけてもらえるように、商品ページのタイトルや説明文に「ブラックフライデー」「セール」などの関連キーワードを入れる
- 専用ページを事前に公開する:ブラックフライデーの専用ページを事前に公開し、検索エンジンにインデックスされる時間を確保する
- キャンペーンの予告を出す:セール前からウェブサイト上やメール、SNSなどで予告を出し、カウントダウンを行い顧客の関心を引きつける
配送ポリシーや返品ポリシーも見直し、顧客が安心して買い物できる環境を整えておきましょう。セールの前には事前に必ずテスト注文を行い、決済、在庫管理、配送、メール通知、税計算が問題なく動作するか確認しておくと安心です。セール中は、サイトを大きく組み替えることは避け、安定的な運用に終始しましょう。
5. BFCM限定のセールや割引を用意する

新規顧客にも既存顧客にもアプローチできるよう、期間限定のセールや割引を準備することが効果的です。ブラックフライデーやサイバーマンデーの魅力は、「ここだけの特別な割引や特典」があることです。実際に、通常のECストアのコンバージョン率は平均2.5~3%ですが、BFCM期間は4.3%前後に跳ね上がったというデータもあります。
たとえば、次のようなオファーが考えられます。
- 割引率を設定する:ブラックフライデーに期待される割引率は最大30%といわれています。これを基準に無理のない範囲で割引率を設定しましょう。
- 注文ごとにサンプルやギフトを同梱する:金銭的価値よりも「体験価値」を提供すると、オファーへの満足度やリピートにつながりやすい傾向があります。
- 次回の購入で使えるギフトカードを付与する:リピーター獲得につながります。
- 当日限定オファーやカウントダウンを行う:顧客の買い逃したくないという心理効果をねらうことができます。カウントダウンタイマーを活用するのも効果的です。
- 1つ買うと1つ無料などのセット割引などをつける:客単価を上げやすい施策です。
- ポイント特典をつける:日本においては、ポイントを集める「ポイ活」の高まりで、ブラックフライデーでもポイント特典を期待する人が増加しています。
どの方法を選んでも、SNS投稿やメール配信でしっかり告知し、「今買うとおトクだ」という気持ちを引き出すことが大切です。
6. 他の事業者と協力する
BFCM時に競合しない業種とコラボレーションを組むと、相乗効果で互いの顧客層にリーチすることができます。特にスモールビジネスでは、地域のつながりなどを軸に他の企業と柔軟に協力しやすいことが強みといえるでしょう。この強みを生かすと、次のようなアイデアが考えられます。
- コーヒー豆のショップが地元カフェと共同プロモーションを行う
- 複数店舗の商品をまとめたギフトガイドを発行する
- お互いの商品をクロスプロモーションする
- 店舗の一部を貸し合って、相互に「ショップインショップ」を実施する
7. 実店舗での購買体験を強化する

オンラインが主流に感じられる中でも、ブラックフライデーにおいて、実店舗の役割は依然として大きいとされています。米国において、ブラックフライデー当日、実店舗で買い物をした消費者が8,170万人に達し、前年の7,620万人から増加、パンデミック以降で最も高い水準となりました。オンラインでの施策とあわせて、実店舗での体験を充実させるオフラインの施策も考えてみましょう。
実店舗がない場合は、この機会にポップアップストアの出店や、地域イベントの参加などを検討するのもおすすめです。実店舗での購買体験を強化するには、次のようなアイデアが考えられます。
- 店舗をブラックフライデー仕様に装飾する
- 来店者に無料のドリンクや軽食を用意する
- 小さな景品が当たるイベントやミニゲームを開催する
また、実店舗ではセール前にスタッフの接客を見直しておきましょう。あわただしい時期でも魅力的な接客ができれば、より多くのリピーターを獲得することができます。顧客が商品をその場で購入しなかった場合も、実店舗での良い体験がそれ以降の来店や購入につながります。
8. 複数のチャネルでセール情報を統一する

BFCMキャンペーンの情報を顧客がどこで見ても、同じトーンやデザインで伝わるようにしましょう。
チャネルによってトンマナがバラバラだと混乱を招きます。逆に、どのチャネルでも統一感のある体験を提供できれば、「このブランドは信頼できる」「わかりやすい」と感じてもらえます。実店舗やオンライン、SNSなど、複数のチャネルで印象を揃えることは、顧客の印象に残りやすいだけではなく、安心してもらえることにもつながります。
特に次の要素を揃えると、統一感を持たせることができます。
- デザインを揃える:サイト上の告知バナー、SNS投稿、メールヘッダーなどで同じ色や画像を使用する
- コピーを揃える:セールの名称やキャッチコピーを統一する
- CTAの表現を揃える:どこでも「今すぐチェック」「48時間限定」など同じ表現を使う
9. メールマーケティングを活用する

BFCMシーズンにおいても、メールは顧客に直接アプローチできる非常に効果的な手段です。SNSのアルゴリズムに左右されず、メッセージを確実に顧客の受信箱に届けられるのがメールマーケティングの大きな強みです。
メール配信システムを利用すると、多くの顧客に効率的にメールを配信することができます。ShopifyのECサイトを利用している場合は、Shopifyメールの利用がおすすめです。まずは、既存顧客や見込み客のリストを作成し、顧客の行動履歴に基づいて、BFCMキャンペーンを配信してみましょう。たとえば、次のような行動履歴で配信先を絞り込むと効果的です。
- 過去に購入したセールやキャンペーン
- 購入した商品カテゴリやアイテム
- 最後に購入してからの経過時間
また、メールアドレスやSMSの収集を強化することも重要です。ウェブサイトにポップアップウィンドウを出して登録を促したり、SNSキャンペーンを実施したりと、外部ツールを活用してメーリングリストへの登録者を増やす工夫をしましょう。
メールの件名は開封率を大きく左右する要素です。近年はAIによる件名生成ツールを活用する方法も注目されています。Shopifyメールには「Shopify Magic」というAI機能があり、希望する内容を入力すると複数の件名案を提案してくれます。テストを繰り返しながら最適な表現を見つけていきましょう。
10. セール期間の前後にもキャンペーンを行う
セール期間を、ブラックフライデー1日限りに限定せず、その前後までに拡大することで、効果を最大化できます。たとえば、次のような施策が考えられます。
- ブラックフライデー前週に「早割セール」を実施する
- ブラックフライデーとサイバーマンデーの間の「スモールビジネスサタデー」に合わせた特典を用意する
- ブラックフライデーの後に「ラストチャンスクーポン」を配布する
- BFCMの週末全体にまたがるプロモーションを展開する
セール期間を広げることで、より多くの顧客にリーチでき、売上の底上げにもつながります。
まとめ
BFCMは年末商戦の始まりに位置し、近年注目が高まっているショッピングイベントであり、小規模な事業者にとっても大きなチャンスです。早めに準備を始め、顧客に喜ばれる工夫を取り入れたり、ストアの表示スピードを高めたり、買い物体験を快適にすることで、ホリデーシーズンの売上アップにつなげられます。
準備に不安がある場合は、Shopifyパートナーマーケットプレイスで専門家に相談するのもおすすめです。また、Shopifyアプリストアにはブラックフライデーに役立つアプリが数多く揃っているので、必要に応じて取り入れてみましょう。
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BFCMに関するよくある質問
2025年のブラックフライデーはいつ?
2025年のブラックフライデーは11月28日金曜日です。
ブラックフライデーはアメリカの感謝祭(11月の第4木曜日)の翌日にあたるため、毎年日付が変動します。翌週の月曜日はサイバーマンデーと呼ばれ、オンラインを中心に大規模なセールが行われます。日本でもこのタイミングに合わせてセールを実施する企業が増えており、スモールビジネスにとっても大きな商機となります。
スモールビジネスサタデーとは?
スモールビジネスサタデー(Small Business Saturday)は、ブラックフライデーの翌日にあたる日で、地域の中小企業を応援するために始まったキャンペーンです。中小企業応援デーとも呼ばれます。
アメリカ発祥の日であり、日本ではまだ定着していませんが、「地元のお店を応援しよう」という流れで取り入れることで、コミュニティとのつながりを強めるきっかけにもなるでしょう。
ブラックフライデーに向けてどんな準備が必要?
まず、過去の売上データを見て人気商品や売れ筋を把握し、在庫を確保しましょう。次に、セール専用ページを用意したり、メールやSNSで事前告知を始めるのがおすすめです。チェックアウトや配送設定もテスト注文で確認しておくと安心です。
ブラックフライデーで注意すべきことは?
ブラックフライデーで注意すべきことは、値引きに頼りすぎると利益が圧迫される点です。長期的な関係づくりを意識して、顧客体験やアフターフォローにも力を入れ、事業規模にあったキャンペーンを展開しましょう。値引きとは別のオファーをつけたり、メールでお礼を送ったりと、体験価値を高めることが、リピーターの獲得につながります。
文:Taeko Adachi