以前は顧客に対して機械的な応対をするだけだったチャットサポートは、戦力として効果を発揮することのできない、時間と労力を無駄にするだけのツールでした。しかし今の世の中のチャットはそれとは違います。店舗なら簡単に築ける顧客との個人的な関係性を、今ではオンラインで再現してくれるとても便利なツールになりました。
昨今、新型コロナウイルス感染症の影響で多くの小売店が店内のショッピング体験をオンラインに移行せざるを得ませんでした。そのこともあり、ここ数ヶ月間でチャットの使用率は急騰。2020年3月16日から7月1日までの期間では、Shopifyの無料メッセージアプリ「Shopify Ping」を使った、ブランドと買い物客の間の会話数は実に85%の増加を記録しました。
「チャットサポートは問題を抱える顧客をサポートするだけのツールである」という見方は視野の狭い考え方だと言えるでしょう。その代わりに、購入サイクルすべての段階における「顧客サポートツール」と捉えてみてください。つまり、購入後のアフターサービスに加えて、購入前、そして購入中のサポートも提供できるツールなのです。
📊 会話ツールとしてのチャットサポートの真の強み—事実を裏付ける調査結果:
- Shopifyのデータによると、顧客のチャット質疑に5分以内に応対したブランドが売上を得る確率は、しないブランドと比べて69%以上。
- Shopify Pingでブランドとチャットをした顧客がコンバージョンに至る確率は、しない顧客と比べて70%以上。
- Forrester社の調査によると、ブランドとチャットした買い物客がコンバージョンに至る頻度は、しない買い物客と比べて3倍高く、さらにその平均カート投入金額も10%〜15%高いことが判明。
さて、ここからは5つのテーマに分けて、チャットサポートを「時間浪費ツール」から「重要戦略ツール」へと変えていく方法を探っていきましょう。
チャットサポートの威力は、買い物客が購入前に感じる「ためらい」にはたらきかけることができる、その優れた機能性にあります。
チャットがあれば、例えば「うちの元気な犬はこのフリスビーを気に入るだろうか?」というような素朴な疑問に、画面の向こう側にいるスタッフが即座に答えることができるのです。
なぜチャットサポートを使うべきか
チャットサポートで提供される個人レベルの提案は、買い物客の空間、ライフスタイル、そして嗜好に訴えかけ、信頼性への目に見えない障壁を取り除き、顧客の決断疲れを回避してくれます。41%の顧客が、ブランドへの問い合わせにはチャットサポートが最も適したツールだと感じている理由はそこにあります。
購入を検討している潜在顧客の獲得
メルマガ送付をはじめ、広告などのマーケティング活動は、買い物をするつもりがない人の気を引き、彼らの購買行動に影響を及ぼします。バスに広告を掲載することは、人々の注意を引くにはとても優れた方法です。ただ後になって商品名を検索したいと思っても、その頃までには忘れてしまっているなんてことが多々あります。
その一方でチャットサポートは、コンテクストマーケティング手法という点から見てもとてもユニークなツールです。つまり潜在顧客はすでにあなたのサイトを訪れ、購入意欲を見せていることを意味しています。
意思決定過程にいる顧客を獲得するためには、積極的にチャットメッセージを送り、今すぐ会話できることを伝えます。そうすることで顧客は意思決定を後回しにする代わりに、疑問に思っていることをすぐに聞くことができるようになります。
例えば、Heatonist社のソースソムリエに、「炒め料理に最適なソース」や「メキシカンパーティー向けおすすめソース」は何かと質問すると、その内容に見合った提案や返信をリアルタイムで返してくれるのでとても便利です。
コンバージョン率の改善:買い物客とリアルタイムで会話を
Shopify Pingの使用分析結果によると、顧客のチャット質疑に5分以内に応対したブランドが売上を得る確率は、しないブランドと比べて69%以上多いことがわかっています。このことからも、購入を検討中の潜在顧客は、ショップからの真摯なサービスを求めていることがわかります。
またこれは「信用」というテーマにもつながります。買い物客は連絡が取りやすいブランドを信用する傾向にあります。またいつでもチャットサポートができるとわかれば、問題があった時にはいつでも連絡できるので安心感も増すでしょう。
顧客とより質の高いエンゲージメントを取る
「エンゲージメントが取れた顧客」とは、その理由が何であれ、あなたのビジネスとつながりを感じている人たちのことを指します。例えばあなたの商品が気に入っている、お気に入りブランドである、または事業使命や企業価値に共感している、などを挙げることができるでしょう。ブランドの誰かと実りあるポジティブな会話をするを、買い物客は「ブランドとつながりを持てた」と感じることができるので効果的です。
Zappos社のような取り組みを同様に実践する必要はありませんが、買い物客がブランドと会話をすることは、店内の楽しいショッピング体験と非常に似ています。それは買い物客にとって、お気に入りのカフェに行きバリスタと仲良くなるような、関係性を築くことを意味しています。
🎯 重要なポイント
- チャットサポートは購入を検討中の買い物客とつながるチャンスを与えてくれるユニークなツール。いつでも質問に答えられるため、カート落ちの理由となる顧客の懸念点を取り除くことに役立つ。
- Shopifyのデータによると、素早い対応は買い物客のコンバージョン率を69%高めてくれること判明。
- 個人レベルのつながりを過小評価しないように。1対1の会話は顧客とのエンゲージメントを築き、楽しいショッピング体験を提供することへとつながる。
Planet Nusa社によるチャットサポート使用方法 - コンバージョン率を高めてコミュニティを構築
海から収集してリサイクルした魚網などの持続可能素材を使って、地球に優しいワークアウトギアを製作するアクティブウェアブランドのPlanet Nusa社。同社のネットショップでは、Shopify ChatやShopify Pingでチャットサポートを実践し、実店舗と同じようなショッピング体験を提供しています。
共同創設者のミーユ・スキャット氏にインタビューし、Planet Nusa社がどのようにチャットサポート機能を使って売上を伸ばし、顧客との間にコミュニティーを築いているのかを聞いてみました。
サイズに関する不安を払拭し、売上を伸ばすことに役立つチャットサポート
顧客の質問に答えることが、売上へとつながることに気付いたと言うミーユ。購入しない限り商品を試着できないネットショップでは、これは特に重要なポイントだったと言います。
「オンラインではサイズに関する完璧な解決法はまだありません。販売する地域特有のサイズで商品を販売する時には特に難しい課題でもあります。従来のサイズチャートではお客様に自ら寸法を測ってもらう必要がありますが、できればそんな手間をかけさせたくはありません。アクティブウェアの購入は手軽で楽しい経験であるべきだと思っています」とミーユは言います。
「そんな問題を解決するために、Shopify Pingが優れた能力を発揮してくれています。サイズのことで質問が来ると、お客様の手元にあるアイテムと同サイズのものを選ぶよう提案することもあります。または自分のSNSプロフィールのリンクを送って『私の普段着のサイズはレギュラーです。お客様がご検討中のパワーレギンスはT1サイズですね。ぜひ私のインスタグラムをチェックしてサイズ感を見てください💕』といった提案をすることもあります」
実店舗以外の場所で商品を販売する時は、商品に関する「曖昧さ」を取り除くことが大切です。これは商品が何であれ同じことで、チャットサポートがあれば「テーブルの大きさを知りたい」「このベルベット製クッションが自然光の下でどのように見えるか知りたい」「グラスの重さを知りたい」というような、個人レベルの質問に素早く答えることが可能になります。
親しみがわくチャットサポートで、コミュニティー精神を構築
Planet Nusa社はチャットサポートを活用し、同社の世界的に拡がるコミュニティーに「受け入れられている」と顧客が感じることができるようにはたらきかけています。「自分の意見を聞いて欲しいと思うお客様はたくさんいます。誰だってそうですよね。だからこそ私たちは色々なプラットフォームを駆使して、お客様と対話をすることを心がけています。それにはチャットサポートが不可欠です」とミーユは言います。
Planet Nusa社はマルチチャネルにおける露出度を活かして、顧客のためのオンラインコミュニティを築いています。それは従来のショッピング体験をはるかに超えたもの。サステナブルなアパレル商品を提供すると同時に、「つながり」を通して女性のエンパワーメントや受け入れの文化を世界的に拡げることを目的としています。それにはチャットサポートが重要な役割を果たしているとミーユは説明します。「お客様とリアルタイムで会話できる一番の利点は、私たちが築こうとしているコミュニティの一部であるとお客様に感じてもらえることです。オンラインでもオフラインでもそれは同じです」
Planet Nusa社のチームが世界中に拡がる顧客と交わす会話は、スタイリングのアドバイスからお気に入りのテレビ番組に至るまで多岐に渡ります。そのような親しみのわくつながりが、顧客にとって特別で素晴らしい体験をもたらしてくれるのです。ミーユ曰く「最も大切なのは、お客様に私たちのサイトで楽しい体験をしてもらうこと。さらに私たちのコミュニティに“受け入れられた”と感じてもらうことができれば尚のことです」
チャットサポートの基本:優れたチャットサポート戦略のニュアンス
誰よりも商品のことを熟知する
チャットサポートに対応するスタッフは、販売するすべての商品のことを熟知していなければなりません。どんな詳細な問い合わせに対しても、素早くピンポイントで提案できるくらい商品を知り尽くしている必要があります。それは売れ筋商品のことをよく把握し、その情報を元にアップセルやクロスセルができることを意味しています。
心のこもった提案をする
顧客が探し求めている商品については、時間をかけて理解するように努め、フォローアップの質問をし、お目当てだと思う商品をいくつかピックアップしてみましょう。これは顧客のことをより良く知るチャンスでもあります。会話を始める絶好の機会を逃さないようにしましょう。
チャット内容を整理する
受信するチャットをどう整理していいかわからない場合には、チャットサポートを導入するのには気が引けてしまうかもしれません。様々なチャットサポートツールはチャット内容を手早くまとめてくれるため、リアルタイムでの返答を可能にしてくれます。Shopify Pingではブランドと買い物客の両者の会話を一ヶ所にまとめてくれるので、自分が会話に参加して顧客にアドバイスをすることが可能になります。どのツールを選ぶにしろ、チャットサポートのプロセスをよりスムーズにしてくれることは間違いありません。
親近感を保つ
チャットボットを導入していないのであれば、顧客は画面を通して生身の人間に対応してもらうことを期待するでしょう。チャットは実店舗での楽しいショッピング体験のようであるべきです。それはお気に入りのカフェでバリスタと言葉を交わすようなもの。自分が気に入っている自社商品について、積極的にその理由を顧客とシェアすることもおすすめです。買い物客はあなたが商品を実際に使ったことがあり、気に入っているという事実を喜んで聞くはずです。
顧客とオンラインでチャットできない場合には、正直にそう伝えることが大切です。例えばPlanet Nusa社のチャットチームは、会話を見逃したり返答が遅れたりした場合には、顧客に以下のような理由を述べるそうです。「Planet Nusaは小さなブランドです。メッセージをいただいた時はちょうど自転車で帰宅途中でした。家に着いたのでぜひお話しさせていただきます💕」
「自転車で帰宅途中だった」という詳細をシェアすることにより、顧客はチームの業務形態を把握することができます。顧客はそんな細やかな情報を知ることによって、ただのロゴでしかなかったブランドイメージが、よりパーソナルでリアルなものに感じられるようになるのです。
チャットサポートオプションは見やすいところに表示
チャットサポートへのアクセスは制限せずに、「お問い合わせ」ページ以外にも表示するようにしましょう。チャットサポートメッセンジャーは、買い物客の妨げにならない程度に、商品ページの見やすい場所に表示することをおすすめします。
顧客がある特定のページで時間を費やすことが見受けれらるのであれば、自動ポップアップ画面を追加してヘルプが必要かどうかを尋ねてもいいかもしれません。
🎯 重要なポイント
- 優れた提案が即座にできるように商品やベストセラー商品についてくまなく把握する。
- チャットサポートメッセンジャーは見つけやすい場所に表示し、リアルタイムでチャットができることを発信する。
- 親近感を打ち出す。潜在顧客は売り手の一番のお気に入り商品やその理由を聞くことに関心がある。
実行に移す:チャットサポートの始め方
Shopify PingとShopify Chatの設定方法
チャットサポートは手軽に始めることができるツールです。まずはチャットサポートツールを選びましょう。人気があるのはShopify Chat、Appleビジネスチャット、Heyday、Facebookメッセンジャーなど。これらのツールはすべてShopify Ping(アプリ内言語は英語のみ)と統合することが可能です。
ツールを選択後、Shopify Pingを設定します。Shopify Pingのモバイルアプリをダウンロードし、後はお使いのShopifyアカウントにログインするだけ。デスクトップをお使いの場合にはshopifyping.comから同じ設定を行ってください。
オンラインで回答する時間帯を決める
チャット回答の時間帯を決めたら、その詳細を明確に表示しましょう。オンラインで買い物する人たちは営業時間内にサイトを閲覧するとは限りません。そのため、可能であれば朝や夜の時間帯にチャット時間を設定することをおすすめします。顧客からのチャットを逃してしまった場合には、オンラインになった時にフォローアップするのをお忘れなく。「気にかけてくれた」と顧客に感じてもらうことが大切です。
回答テンプレートを作成
テンプレート式の返答とは、よくある質問への返答を事前に書き出したもののことです。問題解決への出発点として素晴らしいツールであり、複数のチャットが一度に入ってくるような時には時間の節約にもなります。ウェブ上では回答するのが難しい、個人的な内容の「よくある質問」への返答を事前に考えておくといいでしょう。例えば「私が注文した商品はなぜまだ発送されていないのですか」や、「このアイテムの在庫はいつ入荷されますか」といった質問が挙げられます。
成果の測定方法と機能性の判断
顧客がどんな内容に反応するかを見極める
数あるチャットサポートの中で、売上につながるのはおそらく数件だけ。その他はつながらないことがほとんどでしょう。それはショップ側のコントロールの範疇を超えたものですが、チャットで使う語調やトーン、返答にかかる時間、顧客への提案内容などで違いをもたらすことはできるはず。
何か際立った傾向に気づいたらメモを取り、それを将来的な会話に組み込んではいかがでしょうか。チャットに関するこのような所見は、チャットがどのくらい効果を発揮しているか、またチャットが最大限に生かされているかどうかを見極めることに役立ちます。
チャットサポートの測定基準
チャットサポートの機能性を見極める際に注目すべき測定基準は以下の通りです:
- 平均チャット時間
- チャットした顧客が購入までにかけた時間
- 1日あたりのチャット受信数
- チャットした顧客数に対する、その中で購入に至った顧客数の割合
顧客フィードバックループとしてチャットサポートを活用
チャットは非公式のユーザーテストを実施する機会を与えてくれるツールです。顧客が継続的に行き詰まる場所は一体どこなのでしょうか?
チャットサポートで受ける購入前の質問は、他の潜在顧客が購入を断念してしまう原因の回避に活用することができます。例えば、商品ページの内容が明確でないというような問い合わせを受けたら、それを改善すればいいのです。
顧客が行き留まっていることが判明したら、具体的に何が問題かを聞き出すのが最も適した対応法です。そうすることでどう対処すればいいかがわかり、他のユーザーのためにも問題点を解決しておくことができるようになります。
ビジネスに利点をもたらすチャットサポート
実店舗で優れたショッピング体験を提供するように、チャットサポートは顧客と信頼性の基盤を築くことに大いに役立ちます。有料広告やその他の顧客獲得への努力はトラフィックを誘引しますが、そのトラフィックを売上へとつなげていくには、顧客が抱くブランドや商品への信頼感にかかっています。
チャットサポートは潜在顧客と強いつながりを築くきっかけとなるでしょう。それはまさに、新しい友達と信頼関係を築くための「会話」と同じ役目を果たすのです。
原文:Alexa Collins イラスト:Rachel Tunstall 翻訳:クリンカース恵子
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