メールマーケティングは近年、その役割を変化させつつ、いまだ大きな効果を発揮する手法となっています。この記事ではメールマーケティングの基本知識とともに、効果的な戦略や成功事例などをご紹介しています。
メールマーケティングとは?
メールマーケティングはメールを通じて製品やサービスの情報を顧客に届ける手法です。以前は一斉配信のメールマガジンが主流でしたが、近年はターゲットに合わせて内容や送信タイミングを個別にカスタマイズすることで、開封率やクリック率を高める手法が主流となってきています。また、こうしたカスタマイズは顧客データと連携する配信ツールなどにより、自動化することもできます。
メールマーケティングのメリット
導入ハードルが低い
メールマーケティングは、他のマーケティング手法と比べて導入ハードルが低いといえるでしょう。極端に言えば、自社のメールアドレスと送信先のリストがあれば、メールマーケティングを始めることが可能です。そしてSNSやSEOとは異なり、一度軌道に乗った戦略がアルゴリズムの変化で急に効力を失ってしまう、といった事態もめったにないという点が大きな特徴です。
また、メールマーケティングは比較的歴史のある手法のため、わかりやすいABテストや配信データ統計などの機能を備えた配信ツールがいくつも提供されています。専門的な知識が浅くてもまずは試してみて、段階的に慣れていくという始め方にも適しています。
顧客との継続的な関係構築に適している
メールマーケティングは、新たな顧客を見つけるよりも、すでに接点ができた顧客との関係を維持、あるいは強化していくことに最適なマーケティング手法といえます。例えば、販売ページの閲覧履歴に基づいたクーポンを送って購入につなげたり、SNSや会員サービスへのリンクを挿入してマルチチャネルマーケティングの入り口にしたり、といった方法が考えられます。また、配信のタイミングや頻度を顧客の属性や行動に基づいて調整することもできるため、顧客一人ひとりにあわせたマーケティングを行なうことも可能です。
効果測定から改善点を見つけやすい
メールマーケティングは、送信後の効果を測定するための指標が比較的明確なため、効果測定から改善点が見つけやすいという特徴があります。代表的な指標の例と、それぞれの標準的な数値は、下記の通りです。
- 到達率(送信したメールが届いた割合):90%以上
- 開封率(開封されたメールの割合):15~30%
- クリック率(メール内のリンクがクリックされた割合):2%以上
- コンバージョン率(成約や問い合わせにつながった割合):0.2%以上
メールマーケティング用の配信ツールや効果測定ツールの多くは、こうした指標データを収集・提示してくれる機能を備えています。どの指標が目標に到達していないかを分析することで、次に打つべき施策や戦略が見えてくるでしょう。
メールマーケティングのやり方と戦略
1.明確な目標の設定
メールマーケティングの成否は、明確な目標設定と戦略策定にかかっています。例えば料理教室の場合、開催場所の最大収容人数や材料費や施設費などの経費を考慮して、黒字になる参加人数が目標数値となります。コンバージョン率を0.2%と仮定するなら、その参加人数目標の500倍がメール送信数の目安となります。
2.メール送信相手のペルソナ設定
メールを送る相手のペルソナをイメージし、配信先リストの取捨選択や件名・送信内容の工夫を行なうことで、開封率やコンバージョン率が向上します。自分が提供するサービスや商品はどのような人物をターゲットとしたものであるか、職業や性別、年齢、その人が抱える悩みまで細かく設定しましょう。
3.配信リストの作成
コンバージョン率が同じ場合であっても、配信先リストの数が多くなるほど最終的な成果は大きくなります。そこで、アンケートやメルマガ登録、ウェブサイトのバナー表示など、さまざまな方面からメールアドレスの登録者をできるだけ多く集めることが大切です。登録してもらう際には、メルマガ限定情報の配信や登録時のプレゼントなどのメリットを与えることで、興味・関心を引きやすくなるでしょう。
また、メールアドレスの登録画面は、ペルソナ設定に基づいてデザインを工夫することも効果的です。そして属性に応じた配信リストを作成できるように、年齢や性別、居住地、興味関心などの情報も収集しておくことが重要です。
4.開封率やクリック率が上がるメールの作成
ペルソナ設定
メールマーケティングを成功させるには、顧客の関心をひくコンテンツが不可欠です。メールの開封率をアップさせるには一瞬で読者の興味をひく件名が、リンククリック率のアップには分かりやすい文章とリンク先を見に行くメリットがそれぞれ必要となります。例えば料理に関わる商品やサービスを提供している場合には、ペルソナを「主婦(主夫)、パート勤務、小さい子どもがいて家事と仕事の両立が大変」と設定してみます。
この場合、「○○分で▼▼が作れる!」など、ペルソナが抱える問題の解決になるような情報が興味を引くでしょう。またこうした情報は、携帯の通知にも表示される冒頭に入れることで、より効果的となります。一般的にモバイル端末でメールを確認するユーザーが多いため、通知に表示される冒頭20字程度にメールを開きたくなるような文章を組み込みましょう。
CTAの設定
クリック率を高めるためには、CTA(Call To Acition:バナーやボタンなどの行動を喚起させる施策)を記載したメールを作成します。配信メールの内容のみで商品やサービスの購入を決定することは少ないので、メール本文には件名からの期待をさらに高めるようなポイントのみを簡潔に記載します。読み進めた先に「詳細はこちらから」と書かれたリンクURLや目立つボタンに誘導することで、クリック率も高まるでしょう。
5.効果的な配信のタイミング
メールを送信するタイミングについても、ペルソナによって反応が良い曜日や時間帯が変わってきます。一般的に仕事用のメールは12時から15時、プライベートのメールは21時以降が読まれやすいとされています。曜日に関しては、金曜日が比較的読まれやすい傾向があります。ターゲットとしたい顧客にどんな時間帯が適しているかは、ABテストなどを行ないながら模索することが重要です。
また、顧客の購入ステータスに合わせたメールを送信することも直接的な成果につながります。ECサイトであれば、顧客の買い物かごに入っているが購入まで進んでいない状態の場合にリマインドメールを送ったり、品切れの商品を閲覧した経歴があれば入荷後にお知らせメールを送ったりすることで、積極的に働きかけることができます。
6.効果測定と改善
メールの配信後は、必ず施策の有効性を客観的に評価しましょう。タイトル、ボタンの位置、デザイン、配信時間など、さまざまな条件でABテストを繰り返し、PDCA(Plan、Do、Check、Action)サイクルを回しながら各種指標を改善していきます。
例えば、前回の配信から到達率や開封率が著しく下がった場合、迷惑メールやスパムメールの判定を受けてしまっている可能性も考えられます。多数のアドレスに対して1日に何度もメールを送信したり、古くて使われていないアドレス宛に繰り返し送ったりしていると、迷惑メールと誤認されやすくなります。予防のためにも、配信リストはこまめに更新するようにしましょう。
メールマーケティングの成功事例
クックパッド株式会社
クックパッド株式会社は国内最大級の料理レシピサイトを運営し、日刊で厳選したレシピ情報を数十万人の会員にメール配信しています。また、メルマガでは食品メーカーとのコラボやレシピコンテストの案内など、会員にとって魅力的なコンテンツを不定期に提供しています。このようなメールマーケティングにより、同社はメルマガ購読者数を順調に伸ばすことに成功しました。
同社のメールマーケティングは現在、毎月5,000万人以上の利用者を支える重要な役割を果たしています。
株式会社enish(エニッシュ)
株式会社enishはソーシャルゲームアプリを提供している企業です。メルマガ登録者に対して、新作ゲームのリリース前情報や特典案内を発信しています。さらにメルマガ登録者が他の人をメルマガに招待することで、さらなる特典を得られる紹介プログラムも導入しています。その結果、2ヶ月間で登録者数が10万人を超えるという大きな成果を上げています。
同社の事例は、SNSの普及にかかわらず、メールマーケティングの有効性を証明しています。
メールマーケティングの種類
1. メールマガジン
メールマガジン(メルマガ)は、登録者に対して定期的に情報を提供するメールマーケティングの形態です。主に新製品の案内や特別割引、無料で知識を得られるコンテンツなど、登録者全員にとって価値ある内容の配信が重要です。
メルマガは問い合わせにつながることは少ないものの、顧客との関係を深め、ブランドの認知度を高めるのに役立ちます。
2. ステップメール
ステップメールは、特定の条件に当てはまる顧客に対して一定の期間ごとに段階的なアプローチを行なう戦略です。たとえば、報商品を購入した直後には取引の詳細情報をメールで自動送信し、1週間後には口コミレビューの投稿をお願いするメール、1ヶ月ほどたった後には定期購入の案内を送る、といった一連の流れがステップメールに該当します。
ステップメールを送ることで、商品の再購入やサービスの再利用を促す効果があります。
3. シナリオメール
シナリオメールは、メール開封やURLクリック、商品の購入など特定の行動を取った顧客に対して、メールを自動配信するメールマーケティングの手法です。たとえば、顧客が資料を請求した3日後に特別割引の情報を発信して購入動機を生みだす、といった例が考えられるでしょう。顧客の行動に合わせたメールを送信するため、より効率の良い反応を期待することができます。
4. ターゲットメール(セグメントメール)
ターゲットメールはセグメントメールとも呼ばれ、顧客の特徴に基づいてメールを送信する手法です。年齢や性別、誕生日などの属性情報をもとに、興味関心やニーズを予測して情報を提供します。メールの配信数は比較的少ないですが、属性に合わせて送信するのでメールの開封率やクリック率が高い傾向にあり、問い合わせや購入につながりやすいというメリットがあります。
5. リターゲティングメール
リターゲティングメールは、企業のウェブサイトを訪れたり、商品やサービスに関心を示したりした顧客にメールを送るマーケティング手法です。メールを通じて、顧客にサイトへの再訪や商品の購入などの行動を促すことが目的です。
6. フォローアップメール
フォローアップメールは、見込み客や既存の顧客と継続的な関わりを持つために送信されるメールです。商品の購入やサービスの利用に対する感謝や、商品やサービスに関するフィードバックのお願いなどが含まれます。フォローアップメールは顧客に好印象を与えることができるため、リピーター獲得の可能性を高めます。
7. アップセルメール
アップセルメールは、顧客単価を高める目的で送信するメールのことです。顧客が以前に購入した商品やサービスに対して、追加オプションや新製品の案内、複数購入や定期購入の提案(アップセル)などを行います。アップセルメールを通じて商品やサービスの満足度を高めることで、収益を増加させることが可能です。
8. クロスセルメール
クロスセルメールは、顧客が購入した商品やサービスに関連する商品の購入を促す手法です。例えばノートパソコンを購入した顧客に、保護フィルムやマウスといった関連商品の提案などが考えられます。クロスセルメールはよりよい顧客体験を提供できるため、顧客維持(カスタマーリテンション)につながる可能性を高めます。
9. カゴ落ちメール
カゴ落ちメールとは、商品をカートに入れたものの購入には至っていない顧客にメールを送り、購入を促すマーケティング手法です。その際には、特別なクーポンを添付して送信するといった方法でさらに効果を高めることができるでしょう。顧客はすでに商品をカートに入れているため、きっかけを与えることで購入につながる可能性が高まります。
10. 休眠顧客発掘メール
休眠顧客発掘メールは、過去に接点があったものの、現在は活動が見られない顧客に働きかけ、再度関係を築くために送信するメールです。顧客の現状を確認したり、新商品やサービスの情報を共有したりすることで、再商談や取引再開につながる可能性があります。潜在的なビジネスチャンスを掘り起こすのに効果的です。
メールマーケティングに役立つ配信ツール
Shopifyメール
Shopifyメールを使えば、EコマースプラットフォームであるShopifyの管理画面から、マーケティングメールの作成や送信、クリック率や購入などの結果追跡まで行うことが可能です。毎月10,000通まで無料で送信できるので、コストを抑えながら運用を始めることもできます。豊富に用意されたデザインテンプレートは、文字や写真の追加といったカスタマイズも簡単です。また、Shopifyの顧客情報と連動でき、購入履歴をもとにした配信リストの作成や、購入後・カゴ落ちのフォローメール自動送信なども行うことができます。
HubSpot
HubSpot(ハブスポット)は、CRM(顧客管理ツール)を軸に、セールスやマーケティング、カスタマーサービスなどを効率化するMA(マーケティングオートメーション)ツールです。基本的なメールマーケティング機能は無料プランでも利用でき、顧客情報を活用して送信タイミングなどをパーソナライズすることができます。また、デザイン性の高いテンプレートや、AIによるコンテンツ生成機能なども備えています。
メールマーケティングの例文
タイトル
開封率を上げるにはタイトルの工夫が欠かせません。携帯やパソコンの通知機能に表示される文字数は限られているので、タイトルの冒頭に訴求メッセージを組み込む必要があります。「今月末まで10%OFF!」などお得になる情報は、多くの顧客が興味をもつでしょう。また、例えばペルソナが子どものいる主婦(主夫)の場合には「お子様連れの方必見情報!」など、読み手が自分を対象としているとわかりやすく、呼びかけるような文言が効果的です。
本文
本文では、論点をなるべく1つに絞り、端的に伝えることが重要です。ユーザーの離脱を防ぐためにPREP法で結論から書くようにし、上から読み進めて内容がすっきりと入ってくる構成にしましょう。リンクは最初の画面にある方がクリック率が高いので、パソコン表示とモバイル表示を考慮して冒頭付近に設置すると効果的です。ボタン形式にして視覚的にリンクの存在を伝えることも検討しましょう。
例えば割引クーポンのお知らせメールの場合、以下のような例文が考えられます。
「こんにちは。株式会社~~の△△です。
本日は、来週リリースされる「●●(自社サービス)」について
お得なキャンペーンのお知らせです!
おかげさまで大変好評となり、リリース前の時点ですでに
○○件もの問い合わせをいただいております。
今なら、割引クーポンのご利用で
初回手数料が10%OFFです!是非ご検討ください!」
改行の位置も細かく確認するようにしてください。改行なしで文字を書き続けると、画面サイズによっては文末に重要項目がきてしまい、目立たなくなる上に読みづらくなってしまう可能性があります。
文章に関しては、配信する内容がある程度決まっている場合、メルマガのテンプレートを作成して時短することも可能です。
まとめ
SNSが普及した現代のビジネス環境においても、適切な手法とツールを用いることで、メールマーケティングは依然として強力なマーケティング手段として機能します。特に、顧客との関係を深め、リピーターになってもらうといった目的には最適です。
Shopifyでは、管理画面からメールマーケティングを実施できるアプリも用意されています。効果的なメールのテンプレートや、配信スケジュールの設定、さらにメールの開封率やクリック率、コンバージョン率などの指標を確認するための分析機能など、メールマーケティングに必要な機能を簡単に利用することができます。
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よくある質問
メールマーケティングとは?
メールマーケティングは、メールを通じて製品やサービスの情報を顧客に届け、販売数や集客の増加を目指すデジタルマーケティングの手法です。
メールマーケティングとメルマガの違いは?
メールマーケティングでは、割引クーポンなどを添付することで顧客の購買意欲を高めたり、行動を促すことを主な目的とします。それに対してメルマガは、情報提供を目的とし、商品やサービスの紹介などの情報発信に特化しています。
メールマーケティングは古い?
メールマーケティングは古い手法ではありません。個人を特定してコミュニケーションを図ることができるため、内容や配信タイミングをパーソナライズして、効果的に働きかけられるマーケティング方法といえます。
文:Ryotetsu