カゴ落ちメールは、ECサイトの機会損失の回避に効果的な方法です。ネットショップ訪問者が商品を購入したくなるような効果的なカゴ落ちメールを送ることで、購入を再検討してもらい、売上につなげることができます。ここでは効果的なカゴ落ちメールを送るため、カゴ落ちの原因から、カゴ落ちメールの例文、送るタイミングについて解説します。
カゴ落ちとは?
カゴ落ちとは、ECサイト訪問者が商品をカートに入れたものの、何らかの理由で購入手続きを完了せず、サイトから離脱してしまうことです。カゴ落ちは、カート放棄やカート落ち、カート離脱、チェックアウト離脱とも呼ばれます。
Eコマースのユーザーエクスペリエンスに関する大規模研究を行うBaymard Instututeが発表した49 Cart Abandonment Rate Statistics 2024という資料では、ECサイトのカゴ落ちの平均は70.19%に上るとの結果が報告されています。このように、カゴ落ちはよくある現象ですが、効果的なカゴ落ち対策を行うことで、機会損失の回避につなげることができます。
カゴ落ちが起こる時、ユーザーは一度商品を買い物かごに入れているため、商品への購入意欲があると言えます。それにもかかわらず、購入手続き完了に至らない現象には、さまざまな原因があります。
カゴ落ちが起きる原因11個
1. 購入の予定なくサイトを閲覧していた
カゴ落ちが起こる主な原因に、購入の予定なくサイトを閲覧していたことが挙げられます。特定の商品を探していたわけではなく、ウインドウショッピングのようにECサイトを訪れるユーザーも少なくありません。他のサイトと価格を比較したかった、必要になるかもしれないアイテムをチェックしていた、プレゼントの候補となる商品を見ていた…といった場合もあります。後で見返すことができるように、気になるアイテムを一旦カゴに入れておくこともあるでしょう。
2. 想定外の費用がかかる
想定外の費用が発生すると、ユーザーの購買意欲を削ぐことにつながります。具体的には、予想外の費用には以下のケースが考えられます。
- 商品ページの価格表示が税抜きで、実際にカートに入れたら思っていたよりも高い金額が表示された
- 手数料がかかる・高額である
- 配送料がかかる・高額である
これらの想定外の費用が発生することがわかった時点で、ユーザーは他のサイトと比較をするためにカートに商品を入れたままページを離脱します。カゴ落ちを防ぐためには、税込み価格がわかる表示方法にする、ページのわかりやすい位置に手数料や配送料を表示する、購入金額が一定額を超える場合には送料を無料にするといった対策が有効です。
3. アカウントを作成しなければならない
ECサイトの多くは、商品を購入する際にアカウントの作成を求めます。ユーザーにアカウントを作成してもらうと、サイト運営者はユーザー情報を元にメールでキャンペーンやイベントを告知したり、2回目以降の購入時には個人情報入力が不要になったりすることでリピート率向上が期待できます。しかし、商品の決済時にアカウントを作らなくてはならない場合、その手続きを煩雑に感じてサイトから離れてしまうユーザーも少なくありません。
煩雑なアカウント作成手続きによる離脱を防ぐためには、以下の方法があります。
購入前のアカウント作成を強制にしない
商品を購入するかわからないのに個人情報をサイト運営者に渡したくない、というユーザーは少なくありません。そのため、購入前には最小限必要な情報のみを入力してもらい、商品の「購入後」にアカウントを作成してもらうことで、アカウントの作成が原因の離脱を防げます。
ソーシャルログインを導入する
ソーシャルログインとは、SNSアカウントやGoogle、Yahoo! JAPAN、LINEのアカウントを使用してログインできる機能のことです。ソーシャルサインインとも呼ばれます。煩雑な個人情報入力やアカウント設定を避けられる、アカウントを増やさずに済むといった理由から、ソーシャルログインを好むユーザーは大勢います。ソーシャルログインは、アカウント作成への抵抗感が原因のカゴ落ちを防ぐのに有効です。
4. クレジットカード情報を入力したくない
クレジットカード決済は、ECサイトでの決済でよく使用される方法の一つです。しかし、知名度が低いECサイトや、安心感が得られないネットショップの場合、ユーザーはクレジットカード情報の入力をためらい、カゴ落ちの原因となります。クレジットカード情報を入力したくない人のカゴ落ちを防ぐには、以下の2つの方法が考えられます。
ユーザーに安心してもらえる情報を記載する
運営者情報や会社概要といったサイト運営者の情報や返品・交換方法、プライバシーポリシーなど、ユーザーが必要とする情報を見やすい位置に配置します。またユーザーにとって、購入者の声やレビューもサイトが安心できるかどうかの判断材料となります。
クレジットカード決済以外の決済方法を提案する
クレジットカード決済以外の決済方法を提案するのも有効です。PayPalやGoogle Pay、キャリア決済など、ECサイトで使用できる決済方法はたくさんあるので、複数の決済方法を用意して、ユーザーが安心して決済できるようにしましょう。
5. 配送に時間がかかる
すぐに必要な商品を探しているユーザーは、配送に時間がかかるとわかった時点でページを離脱します。配送に時間がかかるという理由でのカゴ落ちを防ぐには、注文確定から配送の流れ、お届けまでの期間の目安がわかるようにサイトに記載することをおすすめします。特に、繁忙期や注文が集中する時期は発送に時間がかかる可能性があるため、その旨も忘れずに記載するとよいでしょう。
6. 購入までのプロセスが長い
商品を購入するつもりでカートに入れたものの、購入完了までのプロセスが長いとカゴ落ちにつながります。特に近年はスマートフォンやタブレットからの購入も増えており、ブラウザ以外の端末からでも購入の流れがわかりやすく、入力しやすい工夫が必要です。
例えば、住所入力は郵便番号を入れると自動で都道府県と市区町村が入力される、ページ遷移を少なくするといった方法が効果的です。
7. 合計支払い金額が表示されない
カートに商品を入れていくと、カゴ内の商品の合計金額は表示されても、配送料や手数料などが表示されないケースがあります。そのため、ユーザーが見ていた合計金額が決済金額と同金額にならず、決済画面で離脱をまねきます。
カートページが編集できる場合、買い物かごに入っている商品の合計だけではなく、送料や手数料などを含んだ合計金額が表示されるよう設定しましょう。カートに入っている段階で合計金額を確認できるため、ユーザーは安心して支払いを行えます。
8. 返品ポリシーに納得がいかない
返品ポリシーに納得がいかない、返品ポリシーが見つからないといった場合、ユーザーは安心感が得られず購入に至りません。商品に不良が見つかった、注文した商品と届いた商品が異なる、といったトラブルはどのECサイトでも起こり得ます。何か問題があった場合でも安心して対応してくれるサイトであると思ってもらえるように、サイトの見やすい位置に返信ポリシーを設置しましょう。
また、返品ポリシーが販売者に有利な内容ばかりだとユーザーに納得してもらえません。カゴ落ちを防ぐために有効な返品ポリシーは、ユーザーが安心して購入でき、購入者と販売者双方の利益を守れるものである必要があります。
9. サイトがエラーになった
サイトエラーはユーザーが特に、決済中にエラーを起こした場合、決済が完了しているのかどうかがわからず不安を覚えるユーザーも少なくありません。
サイトエラーによるカゴ落ちを防ぐには、主に以下の方法があります。
ECサイトに適したレンタルサーバーを使用する
格安サーバーや容量が少ないレンタルサーバーでは、アクセス集中時などにエラーが起こりやすくなります。また、容量が少ないレンタルサーバーを使用すると、サイトの動作が遅くなり、ユーザー離脱の原因となります。エラーやサイトの動作遅延を避けるためにも、ECサイトの規模に合ったレンタルサーバーを使用しましょう。
サイトスピードを改善する
サイトの読み込みスピードが遅すぎるとエラーが起きます。ツールなどを使用して画像の画質を落とさずにサイズを軽量化する、キャッシュ機能を使うことでサイトの読み込みスピードを改善できます。
定期的にテスト・動作確認をする
サイトエラーが原因のカゴ落ちを避けるためには、定期的にサイトの動作確認を行うことも大切です。テストする際は、注文、決済まで行いましょう。サイトエラーが頻繁に起こる場合は、早急にエラーの原因を突き止めて、改善する必要があります。
10. クレジットカード決済が拒否された
ユーザーが原因のカゴ落ちに、クレジットカード決済の拒否があります。クレジットカード情報の入力が不正確であったり、利用可能金額の上限に達している、残高が不足しているなどの理由からクレジットカード決済が行えず、購入を断念することがあります。
この場合、クレジットカード決済以外の決済方法を用意することで購入につながることもあります。
11. 使いたい決済手段がない
ユーザーは、普段使い慣れている決済手段で支払う傾向にあります。使用したい決済手段が利用できない場合、他のECサイトで似た商品がないか探すためにユーザーはページから離脱します。
決済手段が原因のカゴ落ちを避けるためには、複数の決済手段が使えるようにしておきましょう。趣味のアイテム購入はPayPalで支払うが、日用品はクレジットカードで支払う、など目的に合わせて決済方法を使い分けている人にも喜ばれます。
カゴ落ち対策に有効な「カゴ落ちメール」とは
カゴ落ちメールは、商品をカートに入れた状態で購入まで至らなかった人に向けて送信するメールです。商品購入の手続きが完了していないことをユーザーに知らせて、サイトへの再訪と商品の購入を促します。
ユーザーは、興味のある商品をカートに入れます。そのため、その商品を今すぐ購入するつもりがなくとも「後で購入したい」「購入を検討しているが、考えてから決めたい」と思い、購入を保留にしている可能性があります。カゴ落ちメールは、ユーザーに購買意欲を再度思い出してもらい、売上につなげる役割があります。
カゴ落ちメールを送る時に気を付けること4つ
送るタイミング
最初にカゴ落ちメールを送るベストなタイミングは、カゴ落ちが起きてから1~3時間後です。購買意欲が残っている間にカゴ落ちメールを送ることで、ユーザーに商品購入を再検討してもらいやすくなります。
送る回数と頻度
カゴ落ちメールを送る回数は、合計3~4回程度が良いとされています。カゴ落ちメールを頻繁に受け取ると迷惑だと感じるユーザーが多く、サイトの信用度を下げる原因にもなります。
最初のカゴ落ちメールを送ってから、24時間後、3日後、1週間後など、間隔を空けて送信するのがおすすめです。
件名
カゴ落ちメールを開封してもらうためには、わかりやすい件名をつける必要があります。最初のカゴ落ちメールでよく使用される件名には以下のようなものがあります。
- お買い忘れはありませんか?
- カートに入ったままの商品があります
- 商品の購入手続きが完了していません
- いつも【サイト名】をご利用いただきありがとうございます
2回目以降のカゴ落ちメールは、以下のようなタイトルがおすすめです。
- 関連商品が入荷いたしました
- ○○さまにおすすめの商品のご案内
- 商品の購入に関して、お困りの点はありませんか?
- お探しの商品は見つかりましたか?
カゴ落ちメールは、送信者が誰かわからないと迷惑メールと判断される可能性もあります。送信者ががひと目でわかるように、タイトルにサイト名を入れると効果的です。
内容
カゴ落ちメールを売上につなげるには、メールの内容にも工夫が必要です。ユーザーの購入意欲を引き出すには、以下のポイントを意識してみてください。
- CTA(コールトゥアクション)ボタンを設置する
- 「期間限定」や「在庫数わずか」など緊急性を示すワードを使用する
- 画像で商品の魅力を再度伝える
- メール文をパーソナライズする
また、商品やサービスによっては割引を提案することで売上につながることもあります。商品の割引だけではなく、送料を無料にする、手数料を下げるといった方法も有効です。
カゴ落ちメールの例文
カゴ落ちメールは主に以下の3種類に大別できます。
これらの種類別に、カゴ落ちメールの例文を解説します。
1. サンクス系カゴ落ちメール
例文1
件名:
いつも【サイト名】をご利用いただきありがとうございます
本文:
【ユーザー名】様
いつも【サイト名】をご利用いただき誠にありがとうございます。
【ユーザー名】様のカートに商品が残っております。
お買い忘れはございませんか?
既にご購入済みの商品の場合もございますのでご了承くださいませ。
【カートに残っていた商品の画像】
【商品価格】
【カートへのURLまたはCTAボタン】
お困りの点がございましたらお気軽にご連絡くださいませ。
【サイト名】
【サイトURLや電話番号、メールアドレスなど】
【お問い合わせ受付時間】
2. リマインド系カゴ落ちメール
例文1
件名:
カートに入ったままの商品があります【サイト名】
本文:
【ユーザー名】様
この度は【サイト名】をご利用いただき誠にありがとうございます。
商品がカートに残っておりますが、お買い忘れはありませんか?
【ユーザー名】様のご注文のお手続きはまだ完了しておりませんので、以下のリンクからお手続きを完了させることができます。
既にご購入済みの商品の場合もございますのでご了承くださいませ。
【カートに残っていた商品の画像】
【商品価格】
【カートへのURLまたはCTAボタン】
【ユーザー名】様におすすめの商品
【お勧めする商品の画像】
【商品価格】
【商品ページへのURLまたはCTAボタン】
ご不明点がございましたらお気軽にお問合せください。
【サイト名】
【サイトURLや電話番号、メールアドレスなど】
【お問い合わせ受付時間】
例文2
【ユーザー名】様におすすめの商品のご案内【サイト名】
本文:
【ユーザー名】様
この度は【サイト名】をご利用いただき誠にありがとうございます。
【ユーザー名】様が閲覧した商品に関連するおすすめ商品のご案内です。
既にご購入済みの商品の場合もございますのでご了承くださいませ。
【カートに残っていた商品の画像】
【商品価格】
【カートへのURLまたはCTAボタン】
【ユーザー名】様におすすめの商品
【お勧めする商品の画像】
【商品価格】
【商品ページへのURLまたはCTAボタン】
ご購入のお手続きにご不明点がございましたら、以下の購入ガイドをご覧ください。
【購入ガイドのURLまたはCTAボタン】
またのご利用をお待ちしております。
【サイト名】
【サイトURLや電話番号、メールアドレスなど】
【お問い合わせ受付時間】
3. フォロー・サポート系カゴ落ちメール
例文1
件名:
商品の購入に関して、お困りの点はありませんか?【サイト名】
本文:
【ユーザー名】様
いつも【サイト名】をご利用いただき誠にありがとうございます。
この度は【商品名】をショッピングカートに追加して頂きありがとうございます。
現時点でご注文は完了されておりませんが、商品の購入に関してお困りの点がございましたでしょうか?
ご購入のお手続きにご不明点がございましたら、以下の購入ガイドをご覧ください。
【購入ガイドのURLまたはCTAボタン】
もしお困りの点がございましたら、お気軽にお問合せくださいませ。
【お問い合わせページへのURLまたはCTA】
【サイト名】
【サイトURLや電話番号、メールアドレスなど】
【お問い合わせ受付時間】
例文2
件名:
【ユーザー名】様にお得な割引のご案内【サイト名】
本文:
【ユーザー名】様
この度は【サイト名】をご利用いただき誠にありがとうございます。
【ユーザー名】様のカートに入ったままの商品がございます。
今回に限り、本日限りの割引クーポンをご用意いたしましたのでどうぞご検討下さいませ。
【割引金額】
【割引コード】
クーポンは、以下のお買い物カートの決済画面にクーポンカードを入力いただきますと割引が適用されます。
【買い物カートへのURLまたはCTAボタン】
※こちらのクーポンは本日中のみ有効ですのでお早めにご利用ください。
【ユーザー名】様のご利用をお待ちしております。
【サイト名】
【サイトURLや電話番号、メールアドレスなど】
【お問い合わせ受付時間】
Shopifyでカゴ落ちメールを設定する方法
Shopifyでカゴ落ちメールを設定する方法は以下の通りです。
- 管理画面のマーケティングから「自動化」をクリックする
- 右上に表示される「オートメーションを作成する」をクリックする
- カゴ落ちに関するポップアップが表示されるため、「オートメーションをオンにする」をクリックする
- 管理画面から「設定」をクリックし「通知」ページへ移動する
- 「お客様通知」をクリックする
- 変更したい通知(カゴ落ち)の名前をクリックする
- カゴ落ちメールの件名とメールメッセージ本文を編集し保存する
Shopifyのメール機能を使うと、カゴ落ちメールは1回のみ送信できます。Shopifyアプリを追加することで、カゴ落ちメールを複数回送ったり、メール以外で通知したりできます。
CRM PLUS on LINE:ShopifyストアやアプリとLINE公式アカウントを連携するためのアプリです。カゴ落ちメールをLINEから送信できます。
Avada Email Marketing & SMS:メールマーケティングに役立つアプリです。カゴ落ちメールを自動送信する設定ができるだけではなく、SMSやWhatsAppからもカゴ落ちメールを送ることもできます。
Automizely:メールマガジンを送信できるアプリで、カゴ落ちメール配信にも使えます。顧客の行動ごとにメールの配信設定ができるという特徴があります。
まとめ
カゴ落ちメールは、お礼メールやウェルカムメールと同様に、メールマーケティングの一つとして知られています。ユーザーが不快に感じない頻度や内容を心がけることで、マーケティングツールとしての効果を発揮します。カゴ落ちの原因を理解するだけではなく、カゴ落ちメールの内容や送信タイミングを工夫して、カート放棄で失われていた売上の回復を目指しましょう。
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カゴ落ちメールに関するよくある質問
Shopifyのチェックアウト離脱自動通知の設定方法は?
Shopifyでチェックアウト離脱自動通知を設定するには、管理画面の「マーケティング」セクションから「オートメーション」> 「オートメーションを作成する」> 「チェックアウト離脱」にある自動通知テンプレートを選択します。必要に応じて、「編集」をクリックしてメッセージの内容を編集するか、自動通知のワークフローを変更しましょう。「オートメーションをオンにする」をクリックして内容を確認し、問題なければ「続行」をクリックします。これでチェックアウト離脱自動通知の設定は完了です。
カゴ落ちメールは売上アップに効果がある?
カゴ落ちメールは、カート放棄で失われた売上を回収できる可能性があるため、売上アップにつなげることができます。カゴ落ちメールを送るタイミングや内容を工夫すれば、一旦は購入を諦めたユーザーが商品を購入するきっかけになります。
Shopifyでカゴ落ちメールを編集する方法は?
- 管理画面から「設定」をクリックし「通知」ページへ移動する
- 「お客様通知」をクリックする
- 変更したい通知(カゴ落ち)の名前をクリックする
- カゴ落ちメールの件名とメールメッセージ本文を編集し保存する
文:Masumi Murakami